交通事故による肺挫傷 被害者が知るべき後遺障害認定と賠償請求の全知識 - 名古屋の交通事故弁護士

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交通事故による肺挫傷 被害者が知るべき後遺障害認定と賠償請求の全知識

肺挫傷と交通事故
監修:弁護士 石田 大輔 所属:愛知県弁護士会 2026.6.3

「肺挫傷」は時間差で命を奪う──呼吸を司る臓器が打撲したとき、胸の中で起きている見えない壊滅

交通事故で「肺挫傷」と診断されたとき、多くの被害者やご家族は「肺の打撲のようなものだから、安静にしていれば自然に治るだろう」「骨折しているわけではないから、回復は早いはず」「痛み止めを飲んで様子を見れば大丈夫」と考えてしまいます。しかし、これは極めて危険な認識不足です。

肺挫傷は、単なる「胸の打撲」という怪我ではありません。肺は心臓と並んで生命維持に直結する臓器であり、毎分約5〜6リットルの血液が流れ込み、毎分約12〜20回の呼吸によって体内のあらゆる細胞に酸素を送り届けています。この臓器が損傷するということは、肺胞と毛細血管が断裂し、肺組織内に出血と浮腫が広がり、ガス交換機能が壊滅的に障害される事態を意味します。受傷直後は症状が軽くても、数時間から48時間後に急激に呼吸状態が悪化し、命を落とす危険性がある「時限爆弾」のような怪我なのです。

さらに深刻なのは、たとえ急性期の治療で一命を取り留めたとしても、広範囲の肺挫傷では肺線維化による肺活量低下、慢性的な呼吸困難、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)への進行、外傷後肺炎、フレイルチェスト(多発肋骨骨折に伴う胸壁動揺)の合併など、一生涯にわたる後遺障害が残る危険性が極めて高いという事実です。そして、これらの後遺障害に対して適切な後遺障害等級認定を受けられず、本来得られるべき数千万円の賠償を受け取れないまま、息苦しさと闘いながら経済的にも苦しむ被害者が後を絶ちません。

肺は「酸素と二酸化炭素を交換する生命の風船」とも呼ばれる臓器であり、その損傷は外見からは全く分からない形で被害者の全身に影響を及ぼし続けます。この見えにくさが、後遺障害の見落としや過小評価につながり、被害者にとって二重の悲劇を生むのです。

今回は、交通事故による肺挫傷で被害者が直面する深刻な問題と、適正な賠償を受けるために絶対に知っておくべき法的知識を、徹底的に解説します。

交通事故による肺挫傷の実態と深刻な危険性

肺は、左右の胸腔内に位置し、心臓を挟んで左右1つずつ存在する臓器です。成人の肺は左右合わせて約1,000g、約3億個の肺胞(直径約0.2mmの薄い袋)から構成されています。肺胞の表面積は広げるとテニスコート約半面分(約70㎡)にも及び、ここで毛細血管との間でガス交換が行われています。肺の主な働きは以下のとおりです。

  • ・空気中の酸素を血液中に取り込み、二酸化炭素を排出する「ガス交換機能」
  • ・吸い込んだ異物・細菌・ウイルスを除去する「気道防御機能」
  • ・血液のpHバランスを調整する「酸塩基平衡機能」
  • ・血液中の有害物質を代謝する「代謝機能」
  • ・血液の貯蔵庫として機能し、循環血液量を調整する「血液貯蔵機能」
約1,000g 成人の左右肺の重量
約3億個 肺胞の数
約70 肺胞の総表面積
30〜50% ARDS発症時の死亡率

しかし、肺にはその構造ゆえの致命的な弱点があります。肺は薄い胸膜に包まれ、内部は無数の肺胞と毛細血管が網目状に張り巡らされた極めて繊細な組織です。胸壁(肋骨・胸骨)の奥にあるとはいえ、強い衝撃を受けると肺胞と毛細血管が容易に断裂し、内部に出血と浮腫が広がります。これが肺挫傷の本態であり、打撲で皮下に内出血(青あざ)ができるのと同様の現象が、肺の内部で起こっている状態です。実際、交通事故による胸部外傷では、肋骨骨折と並んで最も頻度の高い損傷のひとつとされています。

交通事故で肺挫傷が発生するケースは、以下のような状況で特に多く発生します。

  • ・正面衝突によるハンドル・ステアリングへの胸部強打
  • ・シートベルトによる胸部の強い圧迫(シートベルト損傷)
  • ・エアバッグ展開時の胸部への衝撃
  • ・側面衝突による側胸部への直接打撲
  • ・バイク事故での転倒・衝突によるタンクや路面への胸部強打
  • ・歩行者・自転車利用者が車にはねられ、ボンネットや路面に胸を強打
  • ・高所からの転落・車外放出による胸部多発外傷
  • ・大型車両との衝突による胸部の挟まれ・圧迫(圧挫損傷)
⚠ 肺挫傷の最大の特徴:「進行性悪化」のリスク

肺挫傷の最も恐ろしい点は、その「進行性悪化」のリスクです。肺挫傷は受傷直後にはX線検査でも異常が認められないことが多く、24〜48時間かけて徐々に肺胞内の出血と浮腫が広がっていきます。「最初は少し息苦しいだけだったのに、翌日になって急に呼吸ができなくなった」というケースも決して珍しくありません。特に若年者は呼吸予備能力が高いため代償が効きやすく、症状が表面化したときには既に重篤な低酸素血症に陥っているケースもあります。

肺挫傷の重症度は、損傷範囲・酸素化能の低下度・合併損傷の有無によって評価され、概ね以下のように分類されます。

軽症 酸素投与不要/短期 肺野の20%未満の損傷で、酸素投与の必要がない、または短期間の酸素投与で改善するもの。
中等症 酸素投与・NPPV 肺野の20〜50%の損傷で、酸素投与または非侵襲的人工呼吸(NPPV)が必要なもの。
重症 人工呼吸器管理 肺野の50%以上の損傷で、気管挿管・人工呼吸器管理が必要なもの。ARDSへ進行するリスクが高い。
最重症 ECMO導入 両肺の広範囲損傷で、ECMO(体外式膜型人工肺)による補助が必要なもの。死亡率が著しく高い。

重度の肺挫傷では、止血や換気管理が困難な場合には集中治療室(ICU)での長期管理、気管切開、ECMO導入が必要となり、これが被害者に深刻かつ生涯にわたる後遺障害をもたらします。また、肺挫傷に伴う深刻な合併症として以下が挙げられます。

  • ・低酸素血症:肺胞でのガス交換が障害され、血液中の酸素濃度が低下する致命的状態
  • ・急性呼吸窮迫症候群(ARDS):受傷後24〜72時間で発症する重篤な呼吸不全。死亡率は30〜50%にも達する
  • ・外傷後肺炎:損傷した肺組織に細菌感染が起こり、重篤な肺炎を引き起こす
  • ・気胸・血胸:肺の損傷部位から空気や血液が胸腔内に漏れ出し、肺が虚脱する
  • ・フレイルチェスト:3本以上の肋骨が連続して2か所以上で骨折し、胸壁が呼吸時に逆方向に動く奇異呼吸を呈する重篤な状態
  • ・無気肺:肺胞内に分泌物や血液が貯留し、肺の一部が虚脱する状態
  • ・肺線維化:損傷した肺組織が線維化し、肺活量が永続的に低下する
  • ・縦隔気腫・皮下気腫:気道や肺からの空気漏れが縦隔や皮下組織に及ぶ
  • ・心臓・大血管損傷の合併:強い胸部外力により心挫傷・大動脈損傷が同時に発生するケースがある
★ 最大の脅威:肺挫傷後のARDS

特に、肺挫傷後のARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome)は、肺挫傷を受傷した被害者にとって最大の脅威です。ARDSは肺胞の広範な炎症と浮腫により急速に呼吸不全が進行する病態で、人工呼吸器による厳重な管理が必要となり、たとえ救命できても肺線維化による永続的な呼吸機能低下が残ることが多いとされています。重症肺挫傷を受けた被害者は、生涯にわたって以下のような制限・管理が必要となる場合があります。

  • ・在宅酸素療法(HOT)の継続
  • ・労作時呼吸困難による職業選択の制限(重労働・運動を伴う業務への従事困難)
  • ・呼吸器感染症(インフルエンザ・肺炎球菌感染症など)への特段の注意
  • ・定期的な呼吸機能検査・画像検査の受診
  • ・気候変動・大気汚染への過敏な反応(喘息様症状の出現)
  • ・生涯にわたる呼吸器内科への通院

これらの制限は、被害者の日常生活・職業選択・社会活動のあらゆる面に深刻な影響を与えるものです。しかし、「肺は自然に治る」「呼吸ができているなら問題ない」という誤解から、これらの後遺障害が賠償請求において適切に評価されないケースが後を絶ちません。

肺挫傷で認定される後遺障害等級

肺挫傷による後遺障害は、損傷の程度、呼吸機能障害の重症度(動脈血ガス分析・スパイロメトリー・運動負荷試験の結果)、合併損傷の有無によって、幅広い等級が認定される可能性があります。適切な等級認定を受けることが、あなたの将来の生活を守る最重要課題です。

認定される可能性のある主な後遺障害等級(胸腹部臓器の機能障害)

等級認定条件の概要
1級4号呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの。
2級3号呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの。
3級4号呼吸機能の著しい低下により終身労務に服することができないもの。
5級3号呼吸機能の著しい低下により極めて軽易な労務以外に服することができないもの。
7級5号呼吸機能の低下により軽易な労務以外の労務に服することができないもの。
9級11号呼吸機能に障害を残し、通常の労務に支障があるもの。
11級10号呼吸機能に障害を残すもの。
12級13号
(疼痛)
疼痛等の神経症状で他覚的所見があるもの。
14級9号
(疼痛)
疼痛等の神経症状で医学的に説明可能なもの。

呼吸機能障害の等級認定では、①動脈血ガス分析(動脈血酸素分圧PaO2・動脈血炭酸ガス分圧PaCO2)、②スパイロメトリー(%肺活量・1秒率)、③運動負荷試験(6分間歩行テストなど)の3つの検査結果と、呼吸困難の程度・介護の必要度を総合して判断されます。動脈血ガス分析やスパイロメトリーで基準に該当しない場合でも、運動負荷試験の結果次第で11級9号が認定される可能性があるため、検査の選択と実施が極めて重要です。

★ 併合により等級が繰り上がる可能性

また、肺挫傷では肋骨骨折、胸骨骨折、心挫傷、横隔膜損傷、肝臓損傷、脾臓損傷など他の臓器にも同時に損傷が及ぶことが多く、複数の後遺障害が残る場合には「併合」により等級が繰り上がります。例えば、肺機能障害で11級・多発肋骨骨折変形で12級が認定された場合は併合10級相当となり、肺機能障害で7級・心機能障害で9級が認定された場合は重い方の7級が1つ繰り上がり併合6級相当となります。認定される等級によって賠償額は数十万円から1億円以上と桁違いに変わることを、絶対に忘れないでください。

後遺障害認定を受けるための絶対に守るべきポイント

肺挫傷で適切な後遺障害認定を受けるためには、事故直後から症状固定まで、計画的かつ戦略的に行動する必要があります。

1 事故直後の緊急対応が生死を分ける

肺挫傷は、事故直後の対応が文字どおり生死を分ける怪我です。以下の症状がある場合、肺挫傷を疑い、絶対に無理をせず救急車を呼んでください。

⚠ 救急要請すべき症状
  • ・胸部の痛み(深呼吸や咳で増悪する痛み)
  • ・呼吸困難・息切れ・息苦しさ
  • ・頻呼吸(1分間に25回以上の浅く速い呼吸)
  • ・血痰・喀血(咳とともにピンク色や赤色の痰が出る)
  • チアノーゼ(唇・指先の青紫色の変色)
  • ・冷や汗、めまい、意識がもうろうとする
  • ・胸を触ると皮膚の下でプチプチと音がする(皮下気腫)
  • ・胸壁が呼吸と逆方向に動く(フレイルチェストの所見)

肺挫傷の最も恐ろしい点は、受傷直後は症状が軽くても24〜48時間後に急激に悪化することです。「事故当日は少し胸が痛む程度だったが、翌朝起きたら呼吸ができないほど苦しくなった」というケースも報告されています。交通事故で胸部に衝撃を受けた場合は、たとえ外傷がなくても、必ず病院で精密検査を受けてください。搬送された病院では、胸の痛みの部位、呼吸困難の有無、咳・痰の性状、事故状況(衝撃の方向・強さ・シートベルトやエアバッグの作動状況)を必ず詳細に伝えてください。

2 精密検査を確実に受ける

肺挫傷の診断と重症度の評価には、以下の検査が不可欠です。

  • 胸部X線検査:肺野の浸潤影・無気肺・気胸・血胸の有無を評価する基本検査。ただし受傷直後は陰影が出ないことが多く、24〜48時間後の再撮影が必須
  • 胸部CT検査:肺挫傷の確定診断に最も重要。損傷の部位・範囲、すりガラス陰影、気胸・血胸・縦隔気腫の有無を詳細に評価
  • 動脈血ガス分析:PaO2(正常80〜100Torr)・PaCO2(正常35〜45Torr)の測定により呼吸機能を定量評価
  • パルスオキシメトリー:SpO2による継続的な酸素飽和度モニタリング
  • 血液検査:炎症反応(CRP・白血球数)、組織損傷マーカー(LDH)の評価
  • 心電図・心エコー検査:心挫傷の合併を否定するために重要
  • スパイロメトリー:%肺活量・1秒率により換気機能を評価(症状固定時に必須)
  • 運動負荷試験(6分間歩行テスト・トレッドミル試験):労作時の呼吸機能を評価

症状固定時には再度CT検査・スパイロメトリー・動脈血ガス分析・運動負荷試験を受け、肺機能の永続的な低下を客観的に記録することが適切な等級認定を得るために不可欠です。特に運動負荷試験は、安静時の検査では基準に該当しない場合でも後遺障害認定の決め手となる重要な検査です。

3 治療方針と通院の継続

肺挫傷の治療は、損傷の重症度と患者の呼吸状態によって大きく異なります。軽症例では安静・酸素投与・鎮痛剤投与で経過観察となり、3〜7日程度で軽快するケースが多いとされています。中等症ではICUでの厳重な管理のもと、酸素投与・非侵襲的人工呼吸(NPPV)・肺理学療法(喀痰排出促進)・抗生物質投与による集中治療が選択されます。重症例では気管挿管・人工呼吸器管理が必要となり、最重症例ではECMO導入が検討されます。気胸・血胸の合併例では胸腔ドレナージ(胸腔内にチューブを入れて空気・血液を排出する処置)が行われます。

いずれの治療の場合も、「退院したから治った」と考えてはいけません。特に中等症以上の肺挫傷を受けた場合は、退院後も以下の管理が必要です。

  • ・呼吸器内科への定期通院と呼吸機能の経過観察
  • ・スパイロメトリー・動脈血ガス分析の定期的なモニタリング
  • ・胸部CT検査による肺線維化・癒着の評価
  • ・呼吸リハビリテーション(呼吸筋トレーニング・喀痰排出訓練)
  • ・インフルエンザ・肺炎球菌ワクチンの定期接種(呼吸器感染症予防)
  • ・禁煙の徹底(喫煙者の場合は厳格な指導)
  • ・労作時の呼吸困難の記録(日常生活への影響を可視化)

これらの管理記録は後遺障害認定において「胸腹部臓器の機能障害」として評価される根拠となります。定期的な通院記録と検査データの蓄積が、適切な等級認定を受けるための決定的な証拠となるのです。

4 症状固定時期の慎重な判断

肺挫傷の症状固定時期は、損傷の重症度や治療内容によって大きく異なりますが、一般的に受傷後6か月から1年以上かかることが多いです。保険会社から「肺挫傷は自然に治る怪我だから、もう症状固定でしょう」「胸部X線で陰影が消えたから治ったはずです」と打診されることがありますが、肺挫傷後の肺機能低下や労作時呼吸困難は通常のX線検査には反映されにくいため、安易に症状固定に応じてはいけません。

症状固定時には、必ず以下の検査・評価を受けてください。

  • ・胸部CT検査:肺線維化・無気肺・癒着の永続的所見の確認
  • ・スパイロメトリー:%肺活量・1秒率・1秒量の測定
  • ・動脈血ガス分析:安静時の酸素化能・換気能の評価
  • ・運動負荷試験(6分間歩行テスト):労作時の呼吸機能と呼吸困難の客観的評価
  • ・呼吸困難の程度の評価(mMRCスケールなどによる定量化)
  • ・日常生活・就労への影響の評価(階段昇降、坂道歩行、運動制限の程度)
  • ・合併損傷(肋骨骨折・胸骨骨折・心挫傷など)の評価
  • ・胸部の疼痛・違和感の評価

特に運動負荷試験は専門的であり、呼吸器内科専門医や呼吸リハビリテーションに精通した施設での検査を積極的に求めてください。これらの客観的データが後遺障害等級認定の根拠となります。

請求できる損害賠償の種類と高額化のポイント

交通事故による肺挫傷で請求できる損害賠償は多岐にわたり、総額は数百万円から場合によっては1億円を超えることもあります。

積極損害(実際に支出した費用)

  • ・治療費(救急搬送費、ICU入院費、人工呼吸器管理費、ECMO費用、手術費、一般病棟入院費、通院費など)
  • ・入院雑費(1日あたり1,500円が目安)
  • ・通院交通費(公共交通機関、タクシー代、自家用車のガソリン代など)
  • ・入院付添費用(近親者が付き添った場合)
  • ・在宅酸素療法(HOT)の機器レンタル費用・酸素ボンベ費用
  • ・将来の呼吸機能検査費用(スパイロメトリー・動脈血ガス分析の生涯分)
  • ・将来のCT・X線検査費用
  • ・将来のワクチン接種費用(インフルエンザ・肺炎球菌の生涯分)
  • ・呼吸リハビリテーション費用
  • ・将来の介護費用(重度呼吸機能障害で日常生活に介護が必要な場合)

消極損害(得られるはずだった利益の喪失)

  • ・休業損害:治療のために仕事を休んだことによる収入減少
  • ・逸失利益:後遺障害により将来得られるはずだった収入の減少

慰謝料(精神的苦痛に対する補償)

  • ・入通院慰謝料:治療期間に応じて算定
  • ・後遺障害慰謝料:認定された等級に応じて算定

保険会社との交渉で絶対に避けるべき失敗

加害者側の保険会社は、営利企業として支払額をできるだけ抑えようとします。知識のない被害者が交渉すると、以下のような不利な状況に追い込まれる危険があります。

失敗1:「肺挫傷は自然に治る怪我だから後遺障害はない」と言われ、諦めてしまう

肺挫傷は確かに軽症例では自然軽快することが多い怪我ですが、「自然に治ることがある」ことと「すべての肺挫傷で後遺障害がない」ことはまったく別の話です。保険会社はこの点を意図的に混同させ、「肺挫傷は青あざのようなもの。時間が経てば治る」と主張することがあります。しかし、中等症以上の肺挫傷では肺線維化・労作時呼吸困難・呼吸機能低下が永続的に残ることがあり、これらは明らかに「胸腹部臓器の機能障害」として評価されるべきものです。「自然に治る」という言葉に惑わされず、客観的な呼吸機能検査の結果に基づいて主張することが重要です。

失敗2:「胸部X線が正常だから後遺障害はない」と認めてしまう

保険会社は「症状固定時の胸部X線写真で異常がないのだから、後遺障害はない」と主張することがあります。しかし、肺挫傷後の肺機能低下は単純X線検査では正確に評価できません。CT検査による肺線維化・無気肺の評価、スパイロメトリーによる%肺活量・1秒率の測定、動脈血ガス分析、そして運動負荷試験による労作時呼吸機能の評価が必要です。「X線が正常」という保険会社の主張に対しては、これらの専門的な呼吸機能検査の結果を根拠として反論することが不可欠です。特に運動負荷試験は、安静時には症状が出ない労作時呼吸困難を客観化できる重要な検査です。

失敗3:自賠責基準での低額提示を受け入れてしまう

保険会社が最初に提示してくる賠償額は「自賠責基準」という最低限の基準で計算されています。しかし、本来であれば「弁護士基準(裁判基準)」で算定すべきであり、その差は2倍から3倍以上になることも珍しくありません。例えば、後遺障害7級の慰謝料は自賠責基準では419万円ですが、弁護士基準では1,000万円です。この差額581万円を放棄してしまうことになるのです。11級の場合も、自賠責基準136万円に対し弁護士基準420万円で、差額は284万円にもなります。

失敗4:症状固定前の示談に応じてしまう

一度示談が成立すると、後から後遺障害が発覚しても追加請求は原則としてできません。肺挫傷の場合、受傷後数か月から1年以上経過してから肺線維化が顕在化し、労作時呼吸困難が悪化するケースがあります。また、外傷後肺炎を繰り返したり、在宅酸素療法が必要となったりするケースもあります。これらの後遺症が確認される前に示談してしまうことは絶対に避けてください。焦らず、必ず症状固定後、後遺障害等級認定の結果が出てから示談交渉を開始してください。

失敗5:通院を途中で中断してしまう

「咳と痰が落ち着いたから」「仕事が忙しくて通院できない」という理由で通院を中断してしまう被害者が少なくありません。しかし、肺挫傷後の肺機能低下は自覚症状が軽くても継続することがあります。通院記録と定期検査の記録は後遺障害認定の重要な証拠です。特に肺挫傷後はスパイロメトリー・動脈血ガス分析・CT検査の記録を途切れなく蓄積することが、適切な等級認定を受けるために不可欠です。

失敗6:合併損傷の後遺障害を見落としてしまう

肺挫傷を引き起こすほどの強い衝撃が胸部に加わった場合、肋骨骨折、胸骨骨折、心挫傷、横隔膜損傷、大動脈損傷、肝臓損傷、脾臓損傷など、隣接する臓器にも損傷が及んでいることが少なくありません。特にフレイルチェスト(多発肋骨骨折に伴う胸壁動揺)は肺挫傷と高頻度に合併し、胸郭の変形・慢性疼痛・呼吸機能のさらなる低下をもたらす重篤な合併症です。複数の臓器・部位に後遺障害が残る場合、「併合」により等級が繰り上がり賠償額が大幅に増加する可能性があります。肺以外の臓器・部位についても漏れなく後遺障害の評価と申請を行うことが極めて重要です。

失敗7:将来の医療費・酸素療法費用を請求し忘れる

重症肺挫傷を受けた被害者は、生涯にわたって呼吸機能検査・CT検査の定期受診、ワクチン接種、場合によっては在宅酸素療法(HOT)の継続が必要となることがあります。在宅酸素療法は月額2〜3万円の機器レンタル費用がかかり、生涯では数百万円から1,000万円を超える負担となります。これらの将来の医療費は賠償として請求できます。しかし、多くの被害者はこれらの請求を忘れ、生涯にわたる医療費を自己負担してしまっています。重症肺挫傷を受けた場合は、必ず将来の検査費用・酸素療法費用・ワクチン費用も損害として請求してください。

弁護士に依頼すべきタイミングと圧倒的なメリット

肺挫傷のような重大な内臓損傷の場合、弁護士のサポートを受けることで得られるメリットは計り知れません。

弁護士に依頼する圧倒的なメリット
  • 適正な後遺障害等級の獲得をサポート(呼吸機能検査データの適切な評価、運動負荷試験の実施依頼、専門医の紹介、異議申立てなど)
  • 「弁護士基準」での高額な賠償金の獲得(自賠責基準の2〜3倍以上)
  • 複雑な手続きや交渉をすべて代行(被害者は治療と回復に専念できる)
  • 保険会社との精神的なストレスからの完全解放
  • 「肺挫傷は自然に治る」という不当な主張への的確な反論
  • 肺機能低下の医学的立証サポート(呼吸機能は通常のX線検査では評価しにくい)
  • 合併損傷(肋骨骨折・心挫傷・フレイルチェストなど)による併合等級の適切な申請
  • 将来の医療費・在宅酸素療法費用・ワクチン費用など、見落としがちな損害の漏れのない請求
  • 後遺障害診断書の記載内容の確認と医師への補足依頼
  • 裁判になった場合の的確な対応と証拠整理
弁護士に依頼すべきタイミング
  • 肺挫傷と診断された直後(早期介入が最も効果的)
  • ICU入院・人工呼吸器管理を受けた場合
  • ARDSやフレイルチェストを発症した重症の場合
  • 肋骨骨折・心挫傷など他の損傷を伴う多発外傷の場合
  • 保険会社から「肺挫傷は自然に治るから問題ない」と言われた場合
  • 保険会社の提示額に納得がいかない場合
  • 症状固定後も労作時呼吸困難が続いている場合

特に、肺挫傷では後遺障害の評価が専門的・複雑であり、外見から分からない障害であるがゆえに症状が見落とされやすいため、事故直後から弁護士に相談し、適切な検査の受け方、呼吸機能データの蓄積方法、後遺障害診断書の記載ポイントについてアドバイスを受けることが、高い等級認定を得るために極めて重要です。

多くの法律事務所では「初回相談無料」や「着手金無料・完全成功報酬制」のサービスを提供しています。また、ご自身や家族の自動車保険に「弁護士費用特約」が付いていれば、原則として自己負担なく弁護士に依頼できます。この特約は、配偶者や同居の親族の保険にも付いている場合があるので、必ず確認してください。

まとめ:肺挫傷被害者が絶対に知っておくべきこと

交通事故による肺挫傷は、あなたの生命を直接脅かし、人生を一変させる可能性がある極めて重大な内臓損傷です。適切な対応をしなければ、本来受けられるべき数百万円から1億円を超える賠償を受けられないまま、息苦しさと経済的困窮の中で生きていかなければならない危険性があります。

肺挫傷被害者が守るべき重要ポイント
  • 事故で胸部に衝撃を受けたら、外傷がなくても必ず救急病院で精密検査を受ける
  • 事故から24〜48時間以内に症状が急激に悪化することがあるため、症状が軽くても絶対に油断しない
  • 胸部CT検査を必ず受け、肺挫傷の有無と重症度を正確に評価してもらう
  • 動脈血ガス分析・パルスオキシメトリーで酸素化能を継続的にモニタリングしてもらう
  • 入院した場合は、ICU管理記録・人工呼吸器使用記録を詳細に保管する
  • 退院後も呼吸器内科への定期通院と呼吸機能検査(スパイロメトリー)を継続する
  • 症状固定時には必ず運動負荷試験(6分間歩行テストなど)を受ける
  • 「肺挫傷は自然に治る」という保険会社の主張を鵜呑みにしない
  • 胸部X線が正常でも、CT・スパイロメトリー・運動負荷試験で異常があれば後遺障害に該当する可能性がある
  • 症状固定前に示談してはいけない(特に肺線維化・労作時呼吸困難の確認が必要)
  • 肋骨骨折・心挫傷・フレイルチェストなど合併損傷の後遺障害も漏れなく申請する
  • 将来の医療費・在宅酸素療法費用・ワクチン費用も忘れずに請求する
  • 保険会社の提示額(自賠責基準)を鵜呑みにしない
  • 後遺障害が残る可能性がある場合は、必ず早期に弁護士に相談する

肺挫傷による後遺障害は、外見からは全く分からない障害です。しかし、肺機能の低下は、労作時の呼吸困難、職業選択の制限、生涯にわたる医療管理の必要性、感染症への脆弱性など、あなたの生活のあらゆる側面に深刻な影響を及ぼします。目に見えない障害だからこそ、客観的な検査データを積み重ね、適切な後遺障害等級の認定を受けることが何より重要なのです。

適正な賠償を受けることは、あなたとあなたの家族の生活を守り、将来の不安を軽減するための当然の権利なのです。

一人で悩まず、交通事故に精通した弁護士の力を借りながら、納得のいく解決を目指してください。あなたの未来を守るために、今、正しい行動を起こしましょう。