頚椎椎間板ヘルニアによる頚椎神経根症で1400万円の賠償獲得事案 - 名古屋の交通事故弁護士

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頚椎椎間板ヘルニアによる頚椎神経根症で、ピアノ講師の職業特性を考慮して1,400万円の賠償を獲得した事案

事故の概要と被害状況

被害者情報

性別

女性

年齢

30代

職業

音楽教室経営のピアノ講師(音楽大学ピアノ科卒業・ヤマハ音楽指導者資格・PTNA指導会員)

後遺障害等級

12級13号

受傷部位

第5・6頚椎間および第6・7頚椎間外傷性椎間板ヘルニア、頚椎神経根症(左C6・C7神経根症状)、左上肢のしびれと筋力低下、左手指の巧緻運動障害、頚部慢性疼痛

事故の態様

名古屋市千種区の市道において、信号待ち停車中の被害者運転車両に、脇見運転の加害車両が後方から追突

賠償金額の比較

項目受任前受任後
保険会社からの提示・裁判380万円
休業損害90万円
入通院慰謝料80万円
逸失利益130万円
後遺障害慰謝料80万円
医療費等を含む賠償総額380万円1,400万円

交通事故の状況

名古屋市千種区の市道において、赤信号で停車中の被害者運転車両に、スマートフォン操作で脇見をしていた加害車両が後方から追突しました。被害者に過失はなく、過失割合は0:100です。衝撃により被害者の頚部は前後に強く揺さぶられ(むち打ち損傷のメカニズム)、頚椎に強い剪断力が加わりました。

事故直後から頚部痛と左上肢のしびれが出現し、整形外科を受診したところ頚椎レントゲン検査で頚椎前弯の消失が確認され、当初は頚椎捻挫(むち打ち症)として保存療法が開始されました。しかし症状が改善せず、受傷から3週間後にMRI検査を実施したところ、第5・6頚椎間および第6・7頚椎間に外傷性椎間板ヘルニアが確認され、左C6・C7神経根の圧迫所見が明らかとなりました。

神経ブロック注射・薬物療法・リハビリテーションを約9か月間継続しましたが、左上肢のしびれ・左手指の巧緻運動障害・頚部慢性疼痛が残存した状態で症状固定となりました。

相談内容

事故から約10か月が経過し、症状固定となった時点で保険会社から示談提示がありました。被害者は自宅併設の音楽教室を経営するピアノ講師として、3歳児から音楽大学受験生までの約60名の生徒に対し、週6日のレッスンを行っていました。日常業務では、模範演奏(生徒の前で実際にピアノを演奏して示す)、生徒の手の動きを至近距離で観察するための持続的な前傾姿勢、楽譜への書き込みや指導記録の記入、コンクール伴奏者としての本番演奏、教室発表会での連弾演奏など、頚部の安定した姿勢保持と左上肢・左手指の精密な運動機能が不可欠でした。

事故後、模範演奏中に左手指がしびれて打鍵ミスが頻発し、長時間の前傾姿勢で頚部痛と左上肢のしびれが増悪し、レッスン後半は集中力が著しく低下するようになりました。コンクール伴奏者の依頼を辞退せざるを得ず、生徒数も約30%減少し、教室収入は事故前と比較して約35%減少しました。

しかし、保険会社の提示では、頚椎椎間板ヘルニアは「事故前からの加齢性変化」とされ後遺障害が14級9号にとどめられ、ピアノ講師という職業への影響も全く考慮されていなかったため、弁護士に相談されました。

成果の概要

まず、脊椎脊髄外科を専門とする整形外科医の協力を得て、頚椎MRI画像の精密評価を実施しました。事故前の検診時の頚椎レントゲン画像(被害者が人間ドックで撮影していたもの)と事故後のMRI画像を比較することで、第5・6頚椎間および第6・7頚椎間の椎間板ヘルニアが事故により新たに発生したものであり、加齢性変化ではないことを医学的に立証しました。

さらに、神経学的検査として、徒手筋力テスト(MMT)、腱反射検査、針筋電図検査、神経伝導速度検査を実施し、左C6・C7神経根支配領域の筋力低下(MMT4/5)と神経伝導速度の低下を客観的に記録しました。これらの画像所見と神経生理学的所見を根拠として、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」の認定を受けました。

なお、保険会社の主張する「14級9号」は神経症状の存在を医学的に説明できる程度にとどまるものであり、本件のように画像所見・神経学的所見で他覚的に証明できる場合は12級13号が認定されるべきであることを審査機関に明確に主張しました。

逸失利益については、ピアノ講師として年間約480万円の事業収入を得ていたことを確定申告書と教室の生徒名簿・月謝記録で立証し、生徒数の減少と本番演奏業務の喪失により、12級の通常の労働能力喪失率(14%)を上回る22%の喪失率と就労可能年数を労働能力喪失期間の制限なく34年と主張しました。

ピアノ講師という職業は、左上肢の精密な運動機能と長時間の演奏・指導姿勢の保持が業務の絶対条件であることを、教室の生徒名簿・レッスン記録・コンクール伴奏依頼の辞退記録・教室収入の推移により詳細に立証しました。頚椎神経根症とピアノ講師という職業特性を総合的に立証し、訴訟を提起して最終的に約3.7倍の1,400万円の賠償を獲得しました。

成果のポイント

  • ・追突事故による頚椎椎間板ヘルニアは、保険会社から「加齢性変化」と主張されることが多いですが、事故前の頚椎画像(人間ドック・健康診断時の画像)が残存している場合はそれと比較し、ない場合でも椎間板の信号変化(高輝度変化=外傷性ヘルニアの所見)を脊椎脊髄外科専門医が評価することで、事故との因果関係を確実に立証できます。
  • ・頚椎神経根症は、MRIによる神経根圧迫所見、徒手筋力テストによる筋力低下、針筋電図検査・神経伝導速度検査による神経生理学的異常を組み合わせることで、14級9号から12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」へと等級を適切に引き上げることができます。
  • ・ピアノ講師・バイオリン講師・ギタリスト・指揮者など、上肢の精密な運動機能と長時間の特殊姿勢保持が業務の中核をなす音楽家の場合、頚椎神経根症による上肢のしびれ・筋力低下・巧緻運動障害は業務継続を直接脅かすものであり、生徒数の推移・本番演奏依頼の辞退記録・教室収入の減少を具体的に立証することで、通常の等級基準を上回る労働能力喪失率を認めさせることができます。
  • ・追突によるむち打ち損傷の事案では、当初の診断が「頚椎捻挫」であっても、症状が遷延する場合は早期にMRI検査を実施することが極めて重要であり、椎間板ヘルニアや神経根症の発見が後遺障害認定の成否を分けることになります。
  • ・自営業者(音楽教室経営者など)の逸失利益は、確定申告書だけでなく、生徒名簿・レッスン記録・月謝記録・本番依頼記録など、収入減少の具体的な根拠を多角的に立証することで、保険会社の低額査定を防ぎ、適正な賠償額を獲得することができます。
  • ・頚椎椎間板ヘルニア・頚椎神経根症の事案では、脊椎脊髄外科専門医との連携による画像評価・神経学的検査・神経生理学的検査の組み合わせが不可欠であり、「むち打ちは14級まで」という保険会社の固定観念を覆すための医学的根拠を構築することが、適正な補償を受けるための鍵となります。

担当弁護士 石田大輔