後遺障害等級認定とは?基本の決め方と例外への対応

監修:弁護士 石田 大輔
所属:愛知県弁護士会
2020.12.26
交通事故で障害が残った場合、賠償金を請求しますが、その額は後遺障害等級認定によって決定されます。ここでは、後遺障害認定とはどのようなものなのか。また、等級の決め方や賠償金提示までの流れについて説明します。
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後遺症と後遺障害の違い
交通事故にあい、ケガを負うと入院や通院で完治を目指します。そこで一定期間治療・リハビリを行っても事故前の状態にならない後遺症が残ってしまった場合、医師はこれ以上医学的な処置では改善されないと判断し、症状固定と診断します。
症状固定後に残った神経症状や身体機能の問題は「後遺症」と呼ばれます。その後遺症のうち、「交通事故に起因していること」が医学的に証明され、労働能力の低下(またはは喪失)で日常の労働に耐えられないと認められると「後遺障害」と定義されます。
簡単にいえば、しびれなどの後遺症があっても、労働能力に影響がないものは後遺障害とは認められないということです。

後遺障害は14段階の等級に区分される
保険金支払いの視点は、後遺障害の症状の程度や部位に応じ、「労働者災害補償保険法施行規則」に於いて14段階の後遺障害等級に区分された等級によって補償金額が決定されます。
この14等級の内容を具体的に見ていくと、どの部位が、どのようになった場合に、何級に認定されるかが細かく決められ、その数は35系列、140種類にも及びます。認定審査のときは、保険会社から提出された書類と照らし合わせ、該当する等級を決定していきます。
後遺障害の等級認定の難しさ
ただし、交通事故にあった場合、35系列140種類の中にない後遺障害が発生したり、複合的に障害が残ったりすることもあります。このような場合、「併合」「相当」「加重」といった方法で処理されます。
複数の系統に及ぶ後遺障害をひとつにまとめる「併合」
一回の事故で複数箇所に後遺障害が残る場合があります。複数の系統の違う後遺障害は、それぞれの後遺障害の等級で見られますが、最終的にひとつの後遺障害にまとめて処理を行います。この処理が併合です。
具体的には以下のような処理が行われます。
・第5等級以上に該当する後遺障害が二以上ある場合、最も重い方の等級を3つ上げる。
・第8等級以上に該当する後遺障害が二以上ある場合、最も重い方の等級を2つ上げる。
・第13等級以上に該当する後遺障害が二以上ある場合、最も重い方の等級を1つ上げる。
・第14等級に該当する後遺障害が二以上ある場合でも14等級のままである。
後遺障害等級表に該当しない後遺障害を認定する「相当」
自賠法施行令別表第一及び第二に定められていない後遺障害が残った場合にはどうでしょうか。後遺障害等級表(自賠法施行令別表第一及び第二)のどれにも該当しない後遺障害についても、その部位や程度に応じて各等級に「相当」するものとして等級を定めることとなっています。
例えば、ある後遺障害がどの後遺障害の系列にも属さない場合や、属する系列はあるものの、該当する後遺障害が規定されていない場合が考えられます。
すでに障害があった人の障害が重くなった場合の「加重」
事故以前に後遺障害のあった人が交通事故にあい、既存の後遺障害部分をさらに悪化させ、後遺障害の程度が重くなることを「加重障害」といいます。
この場合、交通事故後(障害の度合いが交通事故により重くなった状態)の後遺障害の保険金額から、交通事故以前の後遺障害(交通事故以前のケガで後遺障害が認定されているもの)の保険金額を控除した額を限度として保険金が支払われます。なお、すでにあった後遺障害は交通事故が原因のものかどうかは関係ありません。
後遺障害の判断は非常に難しい
以上のように後遺障害等級を申請し、その等級に対応して慰謝料が決まっていきますが、申請する後遺障害は千差万別で、簡単に判断できるものではありません。判断基準は細かく決まっているようで、実際にどこに当てはめればよいのかの判断は曖昧さが残るのです。
ですから専門家たる医師や弁護士と相談しながら後遺障害等級の申請を話し合っていくことが望ましいというわけです。後遺障害認定を有利に進めるためには、交通事故に強い弁護士にご相談ください。