後遺障害等級の認定結果に異議申し立てをする方法

監修:弁護士 石田 大輔
所属:愛知県弁護士会
2020.12.26
後遺障害等級を申請した結果、認められなかった、または一応は認められたが納得できない等級だった、ということがあります。そのような場合には、異議申し立てを行うことができます。
ここでは、後遺障害等級通知後の異議申し立ての手順と気を付けるべきことを解説します。
Contents
異議申し立ては必ずやればよいというものではない
後遺障害等級を申請した結果が不服だったからと言って、全員が異議申し立てをしたほうがよいというわけではありません。場合によっては、まったく勝ち目がないからです。
また、異議申し立てを行う前には、しっかりとした準備が必要となります。なぜなら、準備が整わないままでは、結果は変わらないからです。
では、異議申し立てが有効な事例と、有効でない事例から見ていきましょう。
申し立てしたほうがよい事例
等級認定に提出した後遺障害診断書に不備があった
後遺障害診断書に不備がある場合、申請しても認められるはずがありません。最も多いのは、診断書などの申請書類に、実際の症状がそもそも記載されていないというものです。また、あいまいな書き方で障害の重さが伝わらないこともあります。これらの場合は、書類の内容を精査し、修正後、異議申し立てを行います。
「事前認定」(加害者の加入している保険会社を通じた認定手続き)で申請した
事前認定には、通常の認定手続きより被害者の行う申請手続きが少ないというメリットがありますが、保険会社の提出した書類の内容が不十分な可能性もあります。そのため等級認定が妥当に行われていない可能性もあります。
提出した書類以外に、追加書類がある
これは追加書類の中身にもよりますが、提出することによって判定が覆ることも十分考えられるため、異議申し立てを検討してください。
申し立てが有効でない事例
通院期間や日数が不足している
等級認定の認定には、通院期間や日数など客観的事実を精査して判断されています。この客観的事実が認定要件を満たしていない場合には、異議申し立てをしても等級認定が変わることはないでしょう。通院期間や日数のほかにも、申請書類に記載された客観的事実が明らかに要件を満たしていない場合は同じです。
これといった理由はなく、診断結果に納得がいかない
初回の等級認定の内容を覆すためには、診断書など医師による証明書が重要となります。新たな医師の見解やそれを証明する客観的な書類などがないまま異議申し立てを行っても、新しい事実が増えたわけではありませんので、同じ結果になることがほとんどです。
改めて別の医師の診断を受け、新たな認定事実がないかを判断してもらう事も方法として考えられます。異議申し立ては、新しい事実が見つかってからにすべきです。ただし、整骨院や接骨院での施術は治療として認めてもらえないケースも散見されます。必ず、医療機関の適切な診療科で診断を受けるようにしてください。
異議申し立ての手順について
異議申し立てに関しては、次の3つの方法があります。通常行われる手順で紹介します。
保険会社への異議申し立て
後遺障害認定されない、または妥当な等級ではないなど認定結果に納得できないときは、保険会社への異議申し立てをします。この異議申し立ては費用負担がありません。また、何度でも行えます。しかし、申し立ての手間がかかる上、成功率は高くないのが現実です。
自賠責保険・共済紛争処理機構への異議申し立て
保険会社への異議申し立てで納得できなかったときは、自賠責保険・共済紛争処理機構(第三者機関)へ申請します。保険会社の妥当性を審査してくれ、費用負担もないことが利点です。ただし保険会社への異議申し立てと異なり自賠責保険・共済紛争処理機構への申し立てできるのは1回だけです。
訴訟提起のよる異議申し立て
自賠責保険・共済紛争処理機構の判定結果にも納得できない場合、最終手段は訴訟提起です。この場合、納得いくまで争える反面、解決まで時間がかかることや、相応の費用負担がかかることを考慮しなければなりません。
審査機関が異議申し立てを有効とし、認定を見直すには、診断書など客観的なデータを使い、根拠を示すことができなければ判定は覆りません。個人で対応するには、広範囲の専門知識が必須となり難しいことも多くなります。
そんな時こそ、専門家である交通事故に強い弁護士に力を借りることを積極的に検討してみてください。
