事故の概要と被害状況
被害者情報
| 性別 | 女性 | |
| 年齢 | 40代 | |
| 職業 | 名古屋市内の学校給食調理員(大量調理、寸胴鍋・食缶の運搬、長時間立位、高温多湿の厨房作業を担当) | |
| 後遺障害等級 | 11級10号 | |
| 受傷部位 | 左外傷性横隔膜破裂、左肺挫傷、横隔膜修復術後、労作時呼吸困難、胸腹部痛、呼吸機能低下 | |
| 事故の態様 | 名古屋市緑区の交差点において、乗用車の助手席に乗車中、側道から進入した車両に左側面を衝突され、左胸腹部をドアとシートベルトで強打 | |
賠償金額の比較
| 項目 | 受任前 | 受任後 |
| 保険会社からの提示・裁判 | 750万円 | ― |
| 休業損害 | 90万円 | 220万円 |
| 入通院慰謝料 | 110万円 | 200万円 |
| 逸失利益 | 320万円 | 1,200万円 |
| 後遺障害慰謝料 | 130万円 | 420万円 |
| 医療費等を含む賠償総額 | 750万円 | 2,550万円 |
交通事故の状況
名古屋市緑区の交差点で、被害者が乗用車の助手席に乗車していたところ、側道から進入した車両が左側面へ衝突しました。被害者は左胸腹部をドアとシートベルトで強く打ち付け、救急搬送されました。
胸腹部CTで左肺挫傷と横隔膜損傷が疑われ、その後、胃の一部が胸腔側へ偏位していることが確認され、外傷性横隔膜破裂と診断されました。手術で横隔膜を修復し、約1か月入院した後に退院しましたが、深呼吸時の左胸腹部痛と労作時の息切れが続きました。
呼吸リハビリを継続しても、階段昇降や重量物運搬で呼吸苦が出現し、肺機能検査でも事故前と同等の状態まで回復しませんでした。約1年の治療後、症状が固定しました。
相談内容
被害者は名古屋市内の学校給食施設で約15年間勤務し、大量の食材を使用した調理、20kg前後になる食材容器の移動、大型の寸胴鍋や食缶の運搬、長時間の立ち作業、洗浄作業等を担当していました。
厨房は高温多湿になりやすく、限られた時間内に複数の工程を進めるため、息切れせず継続して身体を動かせることが重要な仕事でした。
事故後は重い食缶の運搬や釜担当から外され、盛り付けや検品を中心とする軽作業へ変更されました。休憩回数が増え、勤務時間も短縮されたため、時間外勤務と一部の手当が減少し、年収は約18%低下しました。
しかし、保険会社は「横隔膜は手術で修復されている」「日常生活では歩行できている」として、職業上の支障を十分に評価していなかったため、弁護士へ相談されました。
成果の概要
事故直後の胸腹部CT、救急記録、手術記録を取り寄せ、側面衝突による胸腹部への強い外力から横隔膜破裂が生じ、手術に至った経過を整理しました。
退院後については、呼吸器内科・外科の診療録、肺機能検査、リハビリ記録を時系列で確認し、労作時呼吸困難と胸腹部痛が継続していることを客観化しました。
主治医には、重量物運搬や高温環境下での長時間作業が症状を増悪させることを意見書に記載してもらい、胸腹部臓器の機能障害として11級10号の認定を受けました。
さらに、給食調理の作業工程表、食缶や調理器具の重量、勤務表、業務分担表、上司の陳述書を提出し、事故後に担当できなくなった作業を具体化しました。事故前後の給与明細から勤務短縮と時間外勤務減少による収入低下も示し、逸失利益を増額しました。
最終的に訴訟上の和解により2,550万円の賠償を獲得しました。
成果のポイント
- ・外傷性横隔膜破裂では、手術によって横隔膜が修復されたことだけで後遺障害の有無を判断するべきではありません。併存する肺挫傷、胸腹部痛、呼吸機能低下、労作時の症状を含め、治療後に残った機能障害を確認する必要があります。
- ・横隔膜損傷と事故との因果関係を示すためには、事故直後の胸腹部CT、救急記録、手術所見が重要です。事故後に呼吸症状が残る場合には、肺機能検査やリハビリ記録も継続して確保する必要があります。
- ・学校給食調理員は「調理をする仕事」というだけではなく、食材や食缶の運搬、長時間立位、高温環境での連続作業など、身体的負荷の大きい業務を含みます。職業名だけでなく、1日の作業工程を具体的に示すことが重要です。
- ・事故後に軽作業へ変更されて勤務を継続できていても、重量作業を免除され、勤務時間や時間外勤務が減っている場合には、労働能力への影響が現実に生じています。
- ・本人の訴えだけでなく、業務分担表、食缶や器具の重量、勤務表、上司の陳述書等によって、事故前後の職務内容の差を客観的に示すことが有効です。
- ・また、呼吸機能障害は安静時だけでは支障が分かりにくい場合があります。平地歩行、階段昇降、重量物運搬、厨房内での連続作業など、どの程度の負荷で息切れや胸腹部痛が出現するのかを具体的に記録することが重要です。
- ・給食調理では、熱源の近くで息切れや胸腹部痛が生じること自体が安全な業務遂行に影響します。本人の説明だけでなく、実際にどの工程から外されたのか、代替作業を誰が担当しているのかを勤務先資料で示すことが就労制限の客観化につながります。
- ・後遺障害等級だけを基準に逸失利益を決めるのではなく、呼吸機能障害が実際の作業量、勤務時間、収入へどのように影響したかを具体的な資料で立証することが適正な賠償につながります。
