事故の概要と被害状況
被害者情報
| 性別 | 男性 | |
| 年齢 | 30代 | |
| 職業 | 昇降機保守会社勤務のフィールドエンジニア(エレベーター・エスカレーターの点検、故障対応、重量部品交換、昇降路内作業、夜間緊急対応を担当) | |
| 後遺障害等級 | 9級11号 | |
| 受傷部位 | 外傷性胸部大動脈損傷、下行大動脈仮性動脈瘤、TEVAR施行後、継続的な血圧管理・画像フォロー、重量作業制限 | |
| 事故の態様 | 名古屋市熱田区の幹線道路において、青信号で乗用車を直進中、対向右折車が進路へ進入して正面衝突し、胸部をシートベルトで強く圧迫 | |
賠償金額の比較
| 項目 | 受任前 | 受任後 |
| 保険会社からの提示・裁判 | 1,800万円 | ― |
| 休業損害 | 280万円 | 650万円 |
| 入通院慰謝料 | 180万円 | 310万円 |
| 逸失利益 | 850万円 | 3,300万円 |
| 後遺障害慰謝料 | 250万円 | 690万円 |
| 医療費等を含む賠償総額 | 1,800万円 | 5,400万円 |
交通事故の状況
名古屋市熱田区の幹線道路で、青信号に従って直進していた被害者車両へ、対向車線から右折してきた車両が進路を塞ぐ形で衝突しました。被害者はシートベルトで胸部を強く圧迫され、救急搬送時には胸痛と背部痛を訴えていました。造影CTで下行胸部大動脈の損傷と仮性動脈瘤が確認され、血圧・心拍数を管理しながら胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)が行われました。術後の経過は安定しましたが、長期的な画像フォローと血圧管理が必要となり、主治医から重量物運搬や強い腹圧を伴う作業を避けるよう指示されました。約1年3か月の経過観察後も事故前の現場作業へ全面復帰できない状態が続き、症状固定となりました。
相談内容
被害者は昇降機保守会社で10年以上勤務し、エレベーターやエスカレーターの定期点検、故障時の緊急復旧、モーター・ブレーキ等の重量部品交換、狭い昇降路内での作業を担当していました。夜間や休日の緊急呼出しも多く、脚立や作業床での姿勢保持、重量工具の運搬など身体負荷の高い職種でした。
事故後は主治医と会社の産業医の意見から、重量部品交換、長時間の昇降路内作業、単独での緊急対応から外され、遠隔監視と点検報告書作成を中心とする業務へ配置転換されました。夜間待機手当、緊急出動手当、時間外手当が減少し、年収は約27%低下しました。
しかし、保険会社は「TEVAR後の大動脈は安定している」「内勤業務は可能である」として逸失利益を低く算定しており、事故前の専門的な現場業務へ復帰できないことが十分に評価されていなかったため、弁護士へ相談されました。
成果の概要
事故直後の造影CT、救急記録、TEVARの手術記録、退院後のCTAを取り寄せ、大動脈損傷の部位と仮性動脈瘤形成、ステントグラフト留置後の継続管理を時系列で整理しました。
心臓血管外科医の意見書には、事故との因果関係、長期画像フォローの必要性、血圧管理と重量作業制限について具体的に記載してもらい、胸腹部臓器の機能障害として9級11号の認定を受けました。
その上で、事故前の作業手順書、緊急出動記録、資格記録、重量部品の仕様書、現場写真、上司の陳述書を提出し、フィールドエンジニアの職務が単なる点検業務ではなく、重量物取扱いと緊急対応を中核とする仕事であることを立証しました。
事故前後の給与明細から、夜間待機手当・緊急出動手当・時間外手当の減少による現実の減収も示し、逸失利益を大幅に増額しました。最終的に訴訟上の和解により5,400万円の賠償を獲得しました。
成果のポイント
- ・外傷性大動脈損傷では、救命治療が成功したことと、事故前と同じ職業能力へ回復したことを分けて評価する必要があります。TEVAR後に画像が安定していても、長期的な画像フォロー、血圧管理、身体負荷への医学的制限が残る場合があります。
- ・事故との因果関係や重症度を示すためには、事故直後の造影CT、CTA、救急記録、手術記録、退院後の画像推移を一貫して整理することが重要です。
- ・昇降機保守のような現場職では、「勤務を続けている」「デスクワークができる」という事実だけで労働能力を評価できません。重量部品交換、昇降路内作業、夜間緊急対応など、事故前に実際に担当していた作業を分解して検討する必要があります。
- ・配置転換によって基本給が維持されていても、夜間待機手当、緊急出動手当、時間外手当等が減少すれば、現実の収入低下が生じます。給与明細と勤務記録を事故前後で比較することが重要です。
- ・医師による作業制限と、会社側が実際に行った配置転換を結び付けるため、主治医意見書、産業医記録、配置転換通知、上司の陳述書等をそろえることが有効です。
- ・また、大動脈損傷では治療後の画像が一度安定していても、将来的なフォローが必要とされる場合があります。定期的なCTAの受診状況や血圧管理の内容も記録し、事故後に新たに生じた継続的な医療管理を整理する必要があります。
- ・昇降機保守では、狭い昇降路や高所で体調変化が生じれば重大事故につながるため、単に筋力があるかではなく、安全に業務を継続できるかという観点から職務制限を評価することも重要です。
- ・後遺障害等級だけで逸失利益を機械的に決めず、事故前の専門技能、現場作業の内容、失った手当、将来の職種選択への影響まで具体的に示すことが適正な賠償につながります。
