頭蓋内出血の後遺障害認定:認定基準と適切な対応策

監修:弁護士 石田 大輔
所属:愛知県弁護士会
2025.3.6
頭蓋内出血による後遺障害は、被害者とその家族の生活に重大な影響を及ぼします。
適切な補償と支援を受けるためには、後遺障害認定制度を理解し、必要な手続きを適切に行うことが重要です。本稿では、頭蓋内出血の後遺障害認定に関する基準や手続き、請求できる補償内容について詳しく解説します。
Contents
頭蓋内出血の後遺障害と認定基準
頭蓋内出血による後遺障害は、その症状と重症度に応じて等級が認定されます。
認定の対象となる後遺症は、主に身体機能障害と高次脳機能障害に分類されます。
身体機能障害としては、運動麻痺、感覚障害、平衡機能障害、構音障害、嚥下障害などが挙げられ、症状の重症度や日常生活への影響度に応じて等級が決定されます。
特に四肢の麻痺や著しい運動障害は、高位等級での認定対象となります。
高次脳機能障害については、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、感情コントロールの障害など、認知機能に関する障害が対象となります。
これらの症状が日常生活や社会生活に与える影響度により等級が判断されます。
等級認定の具体的な基準として、1級1号は四肢の機能を全く失い、常に介護を要する状態を指します。
この状態では、意思疎通が困難で寝たきり状態にあることが多く見られます。
1級2号は精神神経系統の機能に著しい障害があり、常に介護を要する状態を指し、重度の高次脳機能障害により日常生活全般に介助が必要な場合が該当します。
2級は日常生活に著しい制限を受ける状態で、歩行や食事に困難があり、部分的な介助が必要な場合が該当します。
3級以下については、症状の程度に応じて、日常生活や就労への影響度から判断されます。
認定申請に必要な診断書と医学的所見
後遺障害認定の申請には、専門医による詳細な診断書が不可欠です。
診断書には神経学的所見として、意識障害の有無と程度、運動機能障害の詳細、感覚障害の状況、反射異常の有無、平衡機能障害の評価結果などを明記する必要があります。
これらの評価には、JCSやGCSなどの標準的な指標が用いられます。
高次脳機能検査については、全般的知能検査(WAIS-Ⅳ)、記憶力検査(WMS-R)、注意力検査(CAT、TMT)、遂行機能検査(BADS、WCST)、日常生活能力評価(FIM)などの結果を含める必要があります。また、画像診断所見としては、CT・MRI所見における病変の部位、大きさ、性状、さらに経時的変化の記録や二次的合併症の有無についても詳細な記載が求められます。
損害賠償請求の範囲と算定基準
頭蓋内出血の後遺障害に関する損害賠償は、後遺障害慰謝料、逸失利益、将来の介護費用、将来の医療費など、多岐にわたります。
後遺障害慰謝料については、等級に応じた基準額が設定されており、1級の場合は自賠責基準で約2,800万円、2級では約2,400万円が目安となります。
ただし、弁護士基準を適用した場合は、さらに増額される可能性があります。
逸失利益については、後遺障害等級により労働能力喪失率が決定され、1級では100%、2級では90%とされます。
これらの率に基づき、被害者の基礎収入と就労可能年数から将来の収入減少分が算定されます。
将来の介護費用は、要介護状態の程度によって算定され、常時介護が必要な場合は1日あたり16,000円程度、随時介護の場合は1日あたり8,000円程度を基準として、平均余命までの期間で計算されます。
また、将来の医療費としては、継続的な治療費、リハビリテーション費用、医療機器・補助具の費用などが、具体的な医療の必要性に応じて算定されます。
社会保障制度の活用
後遺障害認定を受けた場合、様々な社会保障制度を活用することができます。
障害年金については、障害等級1級・2級の場合は障害基礎年金が、被用者保険加入者の場合は障害厚生年金が支給されます。
ただし、初診日の年金加入状況により受給要件が異なるため、事前の確認が重要です。
介護保険サービスについては、40歳以上の場合、特定疾病として介護保険サービスが利用可能となります。
これには訪問介護、訪問看護、通所リハビリテーション、福祉用具の貸与・購入などが含まれます。
障害者福祉サービスについては、障害者手帳の取得により、自立支援医療、補装具費支給、地域生活支援事業、各種手当や助成制度などを利用することができます。
これらのサービスは、地域によって利用できる内容や条件が異なる場合があるため、居住地の福祉窓口での詳細な確認が推奨されます。
弁護士への相談と専門家支援
頭蓋内出血の後遺障害案件では、その複雑性から弁護士への相談が強く推奨されます。
特に、後遺障害等級の認定申請時、損害賠償額の算定時、社会保障制度の利用検討時、保険会社との交渉時などにおいて、専門家の支援が重要となります。
弁護士による支援のメリットとしては、適切な後遺障害等級の獲得、最適な損害賠償額の算定、各種制度の効果的な活用、示談交渉での優位性確保などが挙げられます。
また、重度の後遺障害により判断能力が著しく低下している場合には、成年後見制度の活用も検討する必要があります。
成年後見人による財産管理・身上保護の支援や、各種手続きの代行により、被害者の権利を適切に保護することができます。
今後の生活支援体制の構築
後遺障害認定後の生活支援体制については、医療・リハビリテーション体制、介護・生活支援体制、就労・社会参加支援など、包括的な視点からの検討が必要です。医療面では、定期的な通院計画、リハビリテーションプログラムの策定、合併症予防の対策、症状管理の方法などを確立する必要があります。
介護・生活支援においては、介護者の確保と支援、住環境の整備、福祉用具の選定、地域支援サービスの利用などを計画的に進めることが重要です。
また、可能な場合には、職業リハビリテーションや就労支援施設の利用、社会活動への参加機会の確保、生きがい支援なども検討します。
まとめ:効果的な支援獲得のために
頭蓋内出血の後遺障害認定においては、医学的所見の的確な評価と適切な補償請求が重要となります。
診断書・医学的所見の充実、適切な補償請求、社会保障制度の活用、専門家支援の確保など、多岐にわたる要素を総合的に考慮する必要があります。
特に重要なのは、医療・福祉の専門職と法律の専門家との緊密な連携です。
これにより、被害者の状態に応じた最適な支援体制を構築し、より良い生活環境を整えることが可能となります。
後遺障害認定は、補償を受けるための出発点であり、その後の継続的なサポート体制の確立が、被害者とその家族の生活の質を大きく左右することを忘れてはなりません。