症状固定とは?その重要性と補償内容の変更について
監修:弁護士 石田 大輔
所属:愛知県弁護士会
2020.12.26
後遺障害で慰謝料を請求するには、後遺障害診断書が必要となります。そして、この書類を作成してもらうには、症状固定と判断される必要があります。
ここでは症状固定とはどのようなものなのか、いつ判断されるのかを解説します。
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症状固定とはそれ以上治療を行っても回復や改善が見込めない状態を指す
交通事故にあいケガを負うと、入院ないし通院して治療やリハビリなどを行って治癒を目指します。治癒とは交通事故で骨折した場合なら、骨が元の通りにくっつき事故前と機能面でも問題がない状態になることを言います。一方、治癒しないとは、骨がくっつかなかったり、曲がってしまって短くなったり、ぐらぐらしてしまう状態です。
治療期間中は加害者側の保険会社から治療費や休業補償が支払われます。しかし、治療やリハビリを行っても治癒しない場合や、何かしらの痛みや違和感が残るなど、これ以上の回復や改善が見込めない場合、「症状固定」となるわけです。
自動車損害賠償保障法では、症状固定とは、「障害が治ったとき身体に存する障害をいう」(自動車損害賠償保障法施行令第2条第1項)となり、一般的な治療でも完治の効果が見られない、自然的経過によってケガや痛みなどの障害が最終の状態となることを言います。ですから症状固定とは医学的な言葉ではなく、損害保険の特有の概念となります。
症状固定と判断される期間の目安は半年
症状固定かどうかの判断は、治療を行っている医師によって行われます。その判断が下される期間は事故発生からおおむね半年といわれています。
ただし、この半年という期間も一定の目安でしかなく、事故の程度や内容、被害者の年齢や体力などの回復度合いによって変わります。治療やリハビリを行いながら医師と相談してくことが重要です。
症状固定後は保険会社に対して請求する補償内容が変わる
前述の通り、事故にあってケガを負った場合、入院や通院を行いケガの完治を目指して治療やリハビリを行う間は、加害者の保険会社が費用負担をします。具体的には、入通院慰謝料、治療費、付添看護費、交通費、休業補償などが請求できます。しかし一定の治療やリハビリを行っても完治の見込みがない場合、医師から症状固定の判断が下され、この時点から、入通院費、交通費、休業補償など補償の請求を保険会社に行うことはできなくなります。
では、どうなるのでしょうか?
症状固定以降は、後遺障害等級の認定を受け、後遺障害慰謝料や逸失利益等を請求することとなります。
症状固定後に残ったケガや痛み、違和感がある場合がある状態を「後遺障害」といいます。後遺障害は認定機関である損害保険料率算出機構(自賠責調査事務所)において診断書をもとに判断され、後遺障害等級が決定されます。後遺障害慰謝料や逸失利益はこの後遺障害等級をベースに算出されます。
つまり「症状固定」は治療、リハビリの上でこれ以上完治は見込めない、自然経過的にケガの治りの最終状態にあるという判断を下すだけではなく、保険会社が支払っている補償に区切りをつける意味もあるのです。
ですから、事故にあって入院通院を行い治療やリハビリを行っている間から、医師と症状固定について相談しておくことが重要になっていきます。
症状固定を受けるときの注意
注意すべき点は、先にも述べた通り、症状固定の状態であるかどうかの判断は医師だけが行えるという点です。完治を目標に通院やリハビリを行っている最中に、保険会社などから、「症状固定ではないか」や「これ以上の治療費や休業補償の支払いができない」と言われることがあります。
しかし、症状固定の判断は医師しかできないわけですから、保険会社に言われたからと医師に症状固定をするよう依頼したり、一人で判断したりする必要はありません。仮に言われたとしたら、医師や弁護士に相談し、適切な時期に診断してもらえるようにすべきです。