交通事故にあったとき、弁護士に相談すべき理由と注意点
監修:弁護士 石田 大輔
所属:愛知県弁護士会
2023.5.9
交通事故にあい、被害を受けたときは専門家である弁護士に相談することで、非常にスムーズな対応が期待できます。
弁護士は交通事故の法的な問題に精通しており、適切な損害賠償の請求や示談交渉を行ってくれます。
また、後遺障害が残ったときの障害認定や損害賠償請求まですべてを任せられるので、被害者は安心して治療やリハビリに専念できます。
弁護士に相談することで、被害者の権利を守り、公正な補償を受けられる可能性が高まるのです。
しかし、弁護士に相談するメリットがある一方で、注意すべき点もあります。ここでは、弁護士に相談するメリットと依頼する際の注意点について詳しく解説します。
Contents
相談すべき理由
交通事故の被害に遭った際、弁護士に相談すべき理由は大きく分けて3つあります。それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
示談交渉の心理的・肉体的なストレス軽減
交通事故に遭うと、多くの場合、肉体的な損傷を受けます。骨折や打撲、捻挫など、外傷が明らかな場合もあれば、むち打ちのように目に見えない損傷を負うこともあります。また、事故の衝撃により、精神的なダメージを受けることも珍しくありません。不安やストレス、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、心の傷は見えにくいものの、日常生活に大きな影響を及ぼします。
このように肉体的にも精神的にも大きな負担を抱える中で、プロである保険会社や加害者側の弁護士と交渉することは、被害者にとって非常に困難な作業となります。保険会社は平日の昼間でも容赦なく被害者の携帯電話や勤務先に連絡してきます。仕事の合間を縫って対応しなければならず、日常生活のリズムが乱れてしまいます。
また、加害者側が事故の責任を認めず、不誠実な対応を取る場合もあります。そんな時、弁護士に依頼していれば、被害者に代わって粘り強く交渉してくれるでしょう。弁護士は法律の専門家として、冷静に事実関係を整理し、相手方を説得する術を持っています。
一般の方にとって、交通事故や治療に関する専門知識を持っていることは稀です。また、示談交渉の場では法律や契約に関する専門用語が飛び交いますが、それらを正しく理解することは容易ではありません。そういった状況で、味方となって親身になってアドバイスをくれ、納得のいく結果に導いてくれるのが弁護士なのです。弁護士に任せることで、被害者は安心して治療に専念できます。
適正相場に合わせた慰謝料を交渉してくれる
交通事故の被害に対する慰謝料の相場には、大きく分けて3つの基準があります。
- 自賠責保険基準(最低限の補償を目的にした基準)
- 任意保険基準(保険会社が独自で設定した基準)
- 弁護士基準(過去の判例などに基づいた上記2つよりも高い基準)
事故の状況やケガの程度にもよりますが、一般的に慰謝料の金額は、
自賠責保険基準 < 任意保険基準 < 弁護士基準
の順で高くなります。弁護士基準は、自賠責保険基準や任意保険基準と比べると、かなり高い金額設定となっています。
弁護士は、休業補償や治療費など、どのような補償項目があり、それぞれいくらの金額を請求できるのかを熟知しています。また、過去の判例などを踏まえ、適正な慰謝料の相場を把握しています。そのため、弁護士に依頼することで、被害者は適正な金額の補償を受けられる可能性が高まるのです。保険会社との示談交渉では、弁護士の存在が心強い味方となるでしょう。
正しい過失割合を主張することができる
交通事故による損害賠償を請求する際、過失割合は非常に重要な意味を持ちます。過失相殺といって、事故の責任割合に応じて被害者側の賠償額が減額されるからです。
本来、過失割合は事故の状況やさまざまな事情を考慮して決定されるべきものです。しかし、加害者側の保険会社や弁護士は、少しでも支払う賠償金を抑えるために、自分たちに有利な主張をしてきます。加害者に有利な状況や事情を強調することで、加害者の責任割合を少なく見積もろうとするのです。
もし、加害者側の主張をそのまま受け入れ、加害者に有利な過失割合で決着してしまうと、被害者側の損害賠償額は大幅に減額されてしまいます。本来受けられるはずの慰謝料を満額受け取れなくなる可能性があるのです。
このようなリスクを避けるため、弁護士の力を借りることが重要です。弁護士は事故の状況を冷静に分析し、被害者に有利な事実を見落とさず、適切な過失割合を主張してくれます。法律の専門家として、論理的に相手方を説得し、被害者の正当な権利を守ってくれるのです。
依頼するときの注意点
交通事故の被害に遭った際、弁護士は頼りになる存在ですが、依頼する際には注意すべき点もあります。弁護士選びを間違えると、期待した結果が得られないこともあるのです。ここでは、弁護士に依頼する際の注意点を2つ挙げます。
費用倒れのリスク
弁護士に依頼する際に最も気をつけたいのが、費用倒れのリスクです。費用倒れとは、弁護士に支払う費用が、加害者側から受け取る慰謝料を上回ってしまい、被害者側が赤字になってしまうことを指します。獲得した慰謝料の金額よりも弁護士費用の方が高くなれば、被害者の元に入る金額は少なくなります。
一般的に、獲得できる慰謝料の見込み額が20万円以下の場合、費用倒れのリスクが高いとされています。そのため、弁護士に相談する際は、事前にどの程度の慰謝料を獲得できる見込みなのかを確認しておくことが重要です。弁護士からの説明をしっかりと聞き、納得できる回答を得られない場合は、他の弁護士に相談してみるのも一つの方法でしょう。
また、弁護士事務所によっては、初回相談が無料で受けられるところもあります。加えて、被害者が契約している自動車保険に「弁護士費用特約」が付帯されている場合もあります。これらを上手く活用することで、費用面でのリスクを軽減できる可能性があります。弁護士に依頼する前に、こうした点についても確認しておくと安心です。
すべての弁護士が交通事故に強いわけではない
弁護士といっても、その得意分野は人それぞれです。法律の専門家である弁護士にも、十人十色の専門性や経験の違いがあります。中には、「交通事故を取り扱っている」と謳っていても、主に扱っているのは別の分野で、交通事故はそこまで得意ではない弁護士もいます。また、弁護士としての経験が浅く、示談交渉に不慣れな場合もあるでしょう。
交通事故の示談交渉を有利に進めるには、豊富な経験と交渉スキルが必要不可欠です。また、被害者に寄り添い、親身になって相談に乗ってくれる姿勢も大切です。弁護士選びを誤ると、期待したような結果が得られないだけでなく、精神的な負担も大きくなってしまいます。
そのため、弁護士に依頼する前に、交通事故案件の取り扱い実績が豊富で、被害者に親身になって対応してくれるかどうかを十分に見極めることが重要です。弁護士との相性も大切な要素です。初回相談の際に、弁護士の人柄や対応を見て、信頼できるかどうかを確かめましょう。納得のいく弁護士に出会えるまで、複数の事務所に相談してみるのも良い方法だと言えます。
以上、交通事故の際に弁護士に相談するメリットと、依頼する際の注意点について詳しく解説しました。
交通事故の被害に遭った時は、一人で抱え込まず、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。ただし、弁護士選びは慎重に行うことが大切です。上記の点を参考に、自分に合った弁護士を見つけられると良いでしょう。適切な弁護士に依頼することで、被害者の権利を守り、納得のいく解決につなげることができるはずです。