慰謝料の相場は3種類。弁護士基準が最も高額
監修:弁護士 石田 大輔
所属:愛知県弁護士会
2020.12.26
交通事故で受傷すると、被害者は慰謝料を請求することができます。どのようなものがあり、いくらくらい受け取ることができるのでしょうか。その中には、治療費などを含めるのでしょうか?
ここでは、慰謝料の考え方と、3つある慰謝料の相場について解説します。
Contents
慰謝料とは?
交通事故が発生すると、交通事故の被害者が受け取る金銭的な補償全てを「示談金(損害賠償金)」といいます。この中には、以下が含まれています。
示談金に含まれるもの
治療費、交通費、逸失利益、車両の修理費、休業損害、慰謝料など
この中で慰謝料については民法で以下のように規定されています。
「不法行為による損害賠償」(民法709条)に、「故意過失にかかわらず他人の権利や利益を侵害した者は損害を賠償する責任を負う」。
治療費や通院にかかる交通費、車両の修理費などの実質的にかかった金額以外の精神的な苦痛に対して支払われる金銭のことです。
つまり、治療費などと慰謝料は別に考えるということになります。
例えば、交通事故でケガを負い、数か月治療したものの治癒せず、後遺症が残ったとします。この場合、治療費などは加害者側の保険会社に負担してもらったうえで、以下の慰謝料を請求します。
- ケガの部位や程度、入院や通院期間に応じて算出される「入通院慰謝料」
- 後遺症をおったことで精神的な苦痛を感じたことへの「後遺障害慰謝料」
なお、遺失利益は年齢や性別、職業などにより金額が左右されますが、慰謝料に関してはこれらを考慮しないことになっています。
人身事故の慰謝料の種類
事故でケガをおった場合に請求できる慰謝料には、次の3つがあります。
「傷害慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」です。
それぞれについて見てみましょう。
傷害慰謝料は、ケガをしたことによる精神的な苦痛に対して支払われるもの
傷害慰謝料は、入通院慰謝料とも呼ばれるものです。交通事故によってケガをしてしまったことで精神的に受けた苦痛に対する慰謝料です。基本的には入院・通院した期間を元に計算されます。
後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対して支払われるもの
後遺障害慰謝料は、交通事故によって後遺障害が残ってしまったことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。金額の算出は、後述の後遺障害等級別表の1級から14級によって算定します。
死亡慰謝料は、近親者の精神的苦痛に対して支払われるもの
死亡慰謝料とは、被害者が死亡したことによる近親者の精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。被害者本人の精神的苦痛に対する慰謝料についても支払われ、近親者が相続しますので、これらを併せて請求していくことになります。
死亡慰謝料に該当する場合、被害者自身は死亡しています。そのため、現実に慰謝料を受け取ることができるのは基本的には相続人となります。これには、配偶者、もしくは近親者(被害者の父母、子、配偶者)、また内縁の妻なども含まれる場合があります。
事故賠償金の相場は?
事故賠償金の相場は、事故の重傷度、物損の程度、被害者の所得水準、弁護士や保険会社との交渉など、様々な要素によって左右されます。一般的には、軽傷や軽微な物損であれば数万円から数十万円程度、重傷や大規模な物損の場合は数百万円以上となりますが、これはあくまで一般的な相場であり、個別のケースによって異なることを忘れてはなりません。
弁護士に相談することで、個々のケースに適切な賠償金を知ることができ、交渉によってより多くの賠償金を得られる可能性があります。
慰謝料の算出方法の種類
慰謝料は、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準」のいずれかで計算されます。
金額は、
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
の順で大きくなります。どの基準を用いるかは交通事故の加害者が加入している保険の種類や、過去の判例を参考にして決められます。
つまり、同じ状況で、同程度の後遺障害を負っても、金額が違ってくる可能性があるということです。
自賠責保険基準
自動車の保有者が法律で加入を義務付けられている保険です。交通事故被害者に対して最低限の補償をすることを目的としているので、慰謝料を定めたものではありません。
また、時折、自賠責保険にすら入っていない運転者がいるのが現実です。
任意保険基準
保険会社が独自に設定している基準で、会社によって若干異なります。自賠責保険基準よりは少し高い金額ですが、弁護士基準よりはかなり低い金額だと思ってほぼ間違いありません。
加害者側の任意保険会社が被害者に示談金を提示するときには、この基準を採用して計算します。
弁護士基準
弁護士会が過去の裁判例をもとに発表している基準です。主に弁護士に依頼したときや裁判になったときに採用される基準です。
「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(通称:赤い本)」や「交通事故損害額算定基準(通称:青本)」にも記載されています。
後遺障害慰謝料の相場
では、後遺障害慰謝料の自賠責基準と弁護士基準の相場を比較してみましょう。自賠責基準と弁護士基準の差がいかに大きいかがお判りいただけると思います。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第1級 | 1100万 | 2800万 |
第2級 | 958万 | 2370万 |
第3級 | 829万 | 1990万 |
第4級 | 712万 | 1670万 |
第5級 | 599万 | 1400万 |
第6級 | 498万 | 1180万 |
第7級 | 409万 | 1000万 |
第8級 | 324万 | 830万 |
第9級 | 245万 | 690万 |
第10級 | 187万 | 550万 |
第11級 | 135万 | 420万 |
第12級 | 93万 | 290万 |
第13級 | 57万 | 180万 |
第14級 | 32万 | 110万 |