事故の概要と被害状況
被害者情報
| 性別 | 女性 | |
| 年齢 | 30代 | |
| 職業 | リハビリテーション病院勤務の理学療法士 | |
| 後遺障害等級 | 10級10号、12級5号併合10級 | |
| 受傷部位 | 左鎖骨遠位端骨折、左肩鎖関節脱臼、左肩関節可動域制限、鎖骨変形 | |
| 事故の態様 | 春日井市の市道において、自転車で通勤中の被害者に、後方から接近した加害車両が左側から接触 | |
賠償金額の比較
| 項目 | 受任前 | 受任後 |
| 保険会社からの提示・裁判 | 1,400万円 | – |
| 休業損害 | 240万円 | 520万円 |
| 入通院慰謝料 | 180万円 | 300万円 |
| 逸失利益 | 700万円 | 2,200万円 |
| 後遺障害慰謝料 | 280万円 | 550万円 |
| 医療費等を含む賠償総額 | 1,400万円 | 3,800万円 |
交通事故の状況
自転車で市道を通勤中の被害者に、後方から接近した加害車両が左側から接触しました。被害者に過失はなく、過失割合は0:100です。事故により被害者は自転車ごと転倒し、左肩を地面に強打しました。
レントゲン検査で左鎖骨遠位端骨折と肩鎖関節脱臼が確認され、観血的整復とプレート固定術が施行されました。約2週間の入院後、約8か月間の通院リハビリを行いましたが、骨癒合後も左肩関節の可動域制限と鎖骨部の変形(皮質上の隆起)が残存しました。
相談内容
事故から1年が経過し、症状固定となった時点で保険会社から示談提示がありました。被害者はリハビリテーション病院に勤務する理学療法士として、患者の関節可動域訓練、徒手筋力テスト、歩行介助、車椅子からベッドへの移乗介助など、両上肢を使った身体的負荷の高い業務を日常的に行っていました。
しかし、左肩関節の可動域が健側の2分の1以下に制限されたことで、患者の体を支える介助動作や腕を高く上げるリハビリ手技が行えなくなり、担当患者数が約半分に減少しました。
保険会社の提示では、肩関節の可動域制限は認めたものの、理学療法士という職業への影響が過小評価され、また鎖骨変形による外貌障害の申請がなされていなかったため、弁護士に相談されました。
成果の概要
まず、整形外科専門医の協力を得て、左肩関節の可動域を正確に測定しました。屈曲が健側130度に対して患側が60度、外転が健側の2分の1以下に制限されていることを記録し、10級10号「1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」の認定を受けました。
さらに、鎖骨遠位端の変形により皮質上に明らかな隆起が生じていることを写真とCT画像で記録し、12級5号「鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの」の認定を受け、併合10級としました。
その上で、理学療法士という職業は、患者の体を支える移乗介助、関節可動域訓練における患者の四肢の誘導、徒手筋力テストでの抵抗付与など、両上肢の十分な可動域と筋力が不可欠な業務であることを、勤務先病院のリハビリテーション科部長の陳述書と実際の業務内容を撮影した動画により詳細に立証しました。
左肩関節の可動域制限により担当患者数が約半分に減少し、理学療法士としての専門性を十分に発揮できなくなったことを明らかにし、併合10級の通常の労働能力喪失率(27%)を上回る35%の喪失率を主張しました。
肩関節機能障害と変形障害の併合認定、および理学療法士という職業特性を総合的に立証し、訴訟を提起して最終的に約2.7倍の3,800万円の賠償を獲得しました。
成果のポイント
- ・鎖骨遠位端骨折による肩関節の可動域制限は、屈曲・外転・内転など各方向の可動域を正確に測定し、健側との比較で客観的に立証することで、10級10号の認定を確実に受けることができます。
- ・鎖骨骨折後の変形(皮質上の隆起)は、見落とされやすい後遺障害ですが、12級5号「著しい変形」として認定を受けることが可能であり、機能障害との併合により等級を上げることができます。
- ・理学療法士、作業療法士、看護師、介護士など、患者の身体を直接支える介助業務が必要な医療・介護職の場合、上肢の機能障害による業務への影響は通常の等級基準を上回ることがあり、具体的な作業内容と担当患者数の減少を立証することが重要です。
- ・肩関節の可動域測定は、測定方法や測定者によって結果が変わることがあるため、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の「関節可動域表示ならびに測定法」に準拠した正確な測定を信頼できる医師に依頼することが極めて重要です。
- ・女性の鎖骨変形は、衣服から露出する部位の変形として外貌障害の評価対象となる可能性があり、見落とさずに申請することが重要です。
- ・鎖骨骨折の事案では、整形外科専門医との連携による正確な可動域測定と変形の記録が不可欠であり、機能障害と変形障害の両面から後遺障害を漏れなく申請することが適正な補償を受けるための鍵となります。
担当弁護士 石田大輔
