橈骨遠位端骨折による手関節機能障害と手指巧緻性障害で2400万円の賠償獲得事案 - 名古屋の交通事故弁護士

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橈骨遠位端骨折による手関節機能障害と手指巧緻性障害で、システムエンジニアの職業特性を考慮して2400万円の賠償を獲得した事案

事故の概要と被害状況

被害者情報

性別

男性

年齢

30代

職業

システムエンジニア(SE)

後遺障害等級

併合10級(10級10号、12級13号)

受傷部位

左橈骨遠位端粉砕骨折、左手関節機能障害、可動域制限、手指巧緻性障害、慢性疼痛

事故の態様

名古屋市千種区の交差点において、青信号で横断歩道を歩行中の被害者が、左折してきた乗用車に衝突される

賠償金額の比較

項目受任前受任後
保険会社からの提示・裁判850万円
休業損害210万円450万円
入通院慰謝料180万円250万円
逸失利益400万円1350万円
後遺症障害慰謝料60万円550万円
医療費等を含む賠償総額850万円2400万円

交通事故の状況

名古屋市千種区の交差点において、青信号で横断歩道を歩行中の被害者が、左折してきた乗用車に衝突されました。被害者に過失はなく、過失割合は0:100です。衝突により転倒し、左手をついた際に左橈骨遠位端の粉砕骨折を負いました。

救急搬送され、CT検査により関節面に及ぶ粉砕骨折が確認されました。受傷翌日に観血的整復固定術を施行し、プレートとスクリューによる内固定を行いました。術後は約1週間の入院加療を受け、その後9か月間のリハビリテーション(実通院日数98日)を継続しましたが、左手関節の可動域制限と手指の巧緻性障害、キーボード操作時の疼痛が残存し、症状固定となりました。

症状固定時のレントゲン・CT検査では骨癒合は得られていましたが、手関節の変形性関節症の初期変化と尺骨突き上げ症候群の所見が認められました。

相談内容

症状固定後、保険会社から示談提示がありました。被害者は名古屋市内のIT企業でシステムエンジニアとして、業務システムの設計・開発・保守を担当し、年収700万円を得ていました。SEの業務は、1日8〜10時間のPC作業が中心であり、プログラミング、システム設計書の作成、デバッグ作業など、キーボードとマウスを高頻度で使用する必要があります。

特に、プログラミングでは1分間に300〜400回のキーストロークを行い、左手で「Ctrl」「Shift」「Alt」などの修飾キーを押しながら右手でキー入力するという協調動作が不可欠です。

しかし、左手関節の可動域制限(掌屈が健側の60%、背屈が健側の65%、回内が健側の70%)により、キーボードの左側のキー(Tab、Caps Lock、Shift等)を押す際に手首を十分に曲げることができず、指の位置がずれてタイプミスが頻発しました。

また、手指の巧緻性障害により、複数の修飾キーを同時押しする動作が困難となり、ショートカットキーの使用に支障が生じました。さらに、1時間以上の連続キーボード操作で左手首に疼痛が生じ、30分程度の休憩を挟む必要が生じました。この結果、プログラミング速度が事故前の約65%まで低下し、納期遵守のために残業時間が月平均20時間から60時間に増加しました。

また、長時間のPC作業が困難なため、プロジェクトリーダーとしての昇進機会を辞退せざるを得ませんでした。会社は勤務継続を認めましたが、担当プロジェクトの規模を縮小し、新規開発業務から保守業務中心に変更されたことで、評価が低下し昇給幅が減少しました。

しかし、保険会社の提示では、後遺障害10級10号(手関節機能障害)と12級13号(神経症状)の併合10級は認定されたものの、「PC作業は継続可能であり、労働能力への影響は限定的」として低い労働能力喪失率で算定され、SE業務における手指の巧緻性とキーボード操作速度の重要性が全く考慮されていなかったため、弁護士に相談されました。

成果の概要

まず、整形外科専門医および手外科専門医の協力を得て、左手関節の可動域測定を詳細に実施し、掌屈が健側80度に対して患側48度(健側の60%)、背屈が健側70度に対して患側46度(健側の66%)、回内が健側90度に対して患側63度(健側の70%)と、複数方向で著しい制限があることを記録しました。

さらに、握力測定では健側42kgに対して患側32kg(健側の76%)、ピンチ力測定では健側7.5kgに対して患側5.8kg(健側の77%)と、手指の把持力も低下していることを確認し、10級10号「一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」の医学的根拠を強化しました。また、手指の巧緻性検査(Nine Hole Peg Test)により、患側の所要時間が健側の1.5倍に延長していることを客観的に記録しました。

さらに、キーボード操作時の動作解析により、手関節の可動域制限のため指の到達範囲が狭まり、キーボード左側のキーを押す際に代償動作(前腕の過度な回内や肩関節の内旋)を強いられることを記録し、タイピング速度測定により、事故前は1分間に平均350ストロークであったものが、事故後は平均230ストロークに低下していることを数値で示しました。

その上で、システムエンジニアという職業の特性を詳細に立証しました。具体的には、SEの1日の業務内容を時系列で示し、プログラミング(1日平均5時間)、システム設計書作成(1日平均2時間)、メール対応(1日平均1時間)など、合計8時間以上のキーボード・マウス操作を伴う業務特性を説明しました。

また、プログラミング言語(Java、Python等)では、「Ctrl+C(コピー)」「Ctrl+V(ペースト)」「Ctrl+Z(元に戻す)」などのショートカットキーを1日に数百回使用し、これらの操作では左手で修飾キーを押しながら右手でキー入力する協調動作が不可欠であることを、実際のコーディング画面の動画により説明しました。

さらに、実際のプロジェクト記録(事故前と事故後の比較)により、同規模のプログラム開発に要する時間が事故前の平均100時間から事故後の平均155時間に延長し、デバッグ作業でのミス率が約2倍に増加していることを数値で示しました。

加えて、IT企業の上司の陳述書により、SE業務においてはプログラミング速度と正確性が生産性の核心であり、被害者の開発効率の低下は明白であること、プロジェクトリーダー昇進の見送りは本人のキャリア形成にとって重大な損失であることを証明しました。

これらの立証により、併合10級の通常の労働能力喪失率27%を、システムエンジニアという職業特性に照らして35%まで引き上げることを主張しました。

また、30代という若年であり、IT業界ではプロジェクトリーダーやマネージャーへの昇進が年収増加の鍵となる時期に、手関節機能障害により昇進機会を失ったことは、生涯年収の大幅な減少を意味することを強調し、労働能力喪失期間を症状固定時から67歳までの全期間を主張しました。

さらに、手関節の変形性関節症と尺骨突き上げ症候群の進行により、将来的に尺骨短縮術や手関節固定術などの追加手術が必要になる可能性があることを手外科専門医の意見書により指摘し、将来の治療費として約250万円を算定しました。

職業特性と年齢、将来の治療費を総合的に立証し、訴訟を提起して最終的に約2.8倍の2400万円の賠償を獲得しました。

成果のポイント

  • ・橈骨遠位端骨折による手関節機能障害は、手関節の可動域を掌屈・背屈・回内・回外の全方向で詳細に測定し、握力・ピンチ力・手指巧緻性も併せて測定することで、10級10号の医学的根拠を強化できます。
  • ・システムエンジニア、プログラマー、データ入力業務、事務職など、長時間のキーボード・マウス操作を伴う職業の場合、手関節機能障害は業務効率と正確性の両方に影響を与えるため、具体的な業務内容と実際の支障を詳細に立証することが重要です。
  • ・タイピング速度測定や巧緻性検査により、キーボード操作速度の低下や手指の協調動作の障害を数値データで示すことで、業務効率への影響を客観的に証明できます。
  • ・プロジェクト記録により、開発時間の延長やミス率の増加を数値で示すことで、労働能力喪失率を通常の等級基準から引き上げることが可能です。
  • ・30代でのキャリア形成期に昇進機会を失うことは、生涯年収への長期的影響があることを強調し、労働能力喪失期間の延長と喪失率の引き上げを主張することが重要です。
  • ・橈骨遠位端骨折後の変形性関節症や尺骨突き上げ症候群の進行リスクについて、手外科専門医の意見書により将来の追加手術の可能性を指摘し、将来治療費を算定することで、さらなる増額が可能です。