骨盤骨折による股関節機能障害で3200万円の賠償獲得事案 - 名古屋の交通事故弁護士

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骨盤骨折による股関節機能障害で、営業職の職業特性を考慮して3200万円の賠償を獲得した事案

事故の概要と被害状況

被害者情報

性別

男性

年齢

50代

職業

製薬会社営業職(MR)

後遺障害等級

10級11号

受傷部位

左寛骨臼骨折、左股関節機能障害、可動域制限、跛行

事故の態様

豊田市の県道において、横断歩道を歩行中の被害者が、左折してきた大型トラックに巻き込まれる

賠償金額の比較

項目受任前受任後
保険会社からの提示・裁判1100万円
休業損害180万円420万円
入通院慰謝料210万円290万円
逸失利益650万円1900万円
後遺症障害慰謝料60万円550万円
医療費等を含む賠償総額1100万円3200万円

交通事故の状況

横断歩道を歩行中の被害者が、左折してきた大型トラックに巻き込まれました。被害者に過失はなく、過失割合は0:100です。事故により左側から地面に転倒し、左寛骨臼骨折(骨盤の股関節を形成する部分の骨折)を負いました。

救急搬送され、CT検査により関節面に及ぶ粉砕骨折が確認されました。受傷翌日に観血的整復固定術を施行し、プレートとスクリューによる内固定を行いました。術後は約1か月間の入院加療を受け、その後6か月間のリハビリテーションを継続しましたが、左股関節の可動域制限と歩行時の疼痛、跛行が残存し、症状固定となりました。

相談内容

事故から1年が経過し、症状固定となった時点で保険会社から示談提示がありました。被害者は大手製薬会社のMR(医薬情報担当者)として、複数の医療機関を1日に5〜8件訪問し、医師や薬剤師に医薬品情報を提供する業務を行っていました。

MRの業務は、車での移動、医療機関内での階段昇降、長時間の立位での説明、重い資料やサンプルの運搬など、下肢に高い負荷がかかる業務特性があります。

しかし、左股関節の可動域制限(屈曲が健側の70%、外転が60%)と歩行時の疼痛により、階段昇降が困難となり、長時間の立位で下肢が疲労しやすくなりました。また、跛行により歩行速度が低下し、1日の訪問件数が事故前の平均7件から4件に減少しました。

会社は内勤の学術業務への配置転換を提案しましたが、MRとしてのキャリアを断念せざるを得ず、給与も約25%減少することになりました。

しかし、保険会社の提示では、10級11号の認定は受けたものの、「デスクワークは可能であり、労働能力への影響は限定的」として低い労働能力喪失率で算定され、MR業務の継続困難という職業特性が全く考慮されていなかったため、弁護士に相談されました。

成果の概要

まず、整形外科専門医の協力を得て、左股関節の可動域測定を詳細に実施し、屈曲が健側120度に対して患側85度(健側の71%)、外転が健側45度に対して患側27度(健側の60%)、内旋が健側45度に対して患側20度(健側の44%)と、複数方向で著しい制限があることを記録し、10級11号「一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」の医学的根拠を確認しました。

さらに、歩行分析により、跛行により歩行速度が健常者の約70%まで低下していること、30分以上の継続歩行で疼痛が増強することを客観的に記録しました。その上で、MRという職業の特性を詳細に立証しました。

具体的には、MRの1日の業務スケジュールを時系列で示し、車での移動(1日100〜150km)、医療機関への訪問(平均7件)、各施設での階段昇降(エレベーターのない診療所も多い)、医師への立位での説明(1回15〜30分)、医薬品サンプルや資料の運搬(重量10〜15kg)など、下肢への高負荷な業務内容を具体的に説明しました。

また、実際の訪問記録(事故前と事故後の比較)により、1日の訪問件数が平均7件から4件に減少し、訪問先でも階段のある施設を避けざるを得なくなっていることを数値で示しました。さらに、製薬会社の上司の陳述書により、MR業務においては医療機関への直接訪問が業務の本質であり、訪問件数の減少は営業成績に直結すること、内勤への配置転換はキャリアパスの断絶を意味することを証明しました。

これらの立証により、10級11号の通常の労働能力喪失率27%を、MRという職業特性に照らして40%まで引き上げることを主張しました。また、50代という年齢でMRから内勤への配置転換を余儀なくされることは、専門性の喪失と収入減少を伴う重大なキャリアの変更であることを強調し、労働能力喪失期間も症状固定時から67歳までの全期間を主張しました。

職業特性と年齢を総合的に立証し、訴訟を提起して最終的に約2.9倍の3200万円の賠償を獲得しました。

成果のポイント

  • ・寛骨臼骨折による股関節機能障害は、股関節の可動域を複数方向(屈曲、外転、内旋等)で詳細に測定し、健側との比較により著しい制限を立証することで、10級11号の認定を確実に受けることができます。
  • ・歩行分析により、跛行による歩行速度の低下や継続歩行時の疼痛増強を客観的に記録することで、日常生活および労働能力への影響を医学的に証明できます。
  • ・MR(医薬情報担当者)、不動産営業、保険外交員など、1日に複数の訪問先を回り、階段昇降や長時間の立位を伴う営業職の場合、股関節機能障害は業務遂行の根幹に関わるため、具体的な業務内容と実際の支障を詳細に立証することが重要です。
  • ・訪問件数の記録や営業成績の変化など、業務効率の低下を数値データで示すことで、労働能力喪失率を通常の等級基準から大幅に引き上げることが可能です。
  • ・50代での専門職からの配置転換は、残りの職業人生における専門性の喪失と収入減少を意味するため、年齢とキャリアの両面から労働能力への長期的影響を主張することが重要です。
  • ・骨盤骨折・股関節機能障害の事案では、整形外科専門医との連携による詳細な可動域測定と歩行分析、そして職業特性の具体的立証が、適正な補償獲得の鍵となります。