事故の概要と被害状況
被害者情報
| 性別 | 男性 | |
| 年齢 | 20代 | |
| 職業 | システムエンジニア | |
| 後遺障害等級 | 別表第一 1級3号 | |
| 受傷部位 | 第1腰椎脱臼骨折、脊髄完全損傷、両下肢完全麻痺、膀胱直腸障害 | |
| 事故の態様 | 名古屋市近隣都市の高速道路において、走行中の被害者車両が、居眠運転の大型トラックに後方から激しく追突され、ガードレールに衝突 | |
賠償金額の比較
| 項目 | 受任前 | 受任後 |
| 保険会社からの提示・裁判 | 8000万円 | – |
| 休業損害 | 580万円 | 1200万円 |
| 入通院慰謝料 | 600万円 | 800万円 |
| 逸失利益 | 5500万円 | 1億4000万円 |
| 後遺症障害慰謝料 | 1億4000万円 | 2800万円 |
| 医療費等を含む賠償総額 | 8000万円 | 2億3000万円 |
交通事故の状況
高速道路を走行中の被害者車両が、居眠運転をしていた大型トラックに後方から時速100km超で激しく追突され、前方のガードレールに衝突しました。被害者に過失はなく、過失割合は0:100です。
事故により車体が大破し、被害者は座席に強く挟まれる形で第1腰椎の脱臼骨折を負いました。脊髄が完全に離断され、受傷直後から両下肢の完全麻痺と感覚消失、膀胱直腸障害が出現しました。ドクターヘリで救命救急センターに搬送され、緊急で脊椎固定術を施行しましたが、脊髄の完全損傷により両下肢の機能回復は見込めないと診断されました。
約6か月の入院リハビリテーションを経て、車椅子での移動と自己導尿による排泄管理を習得し、退院となりました。
相談内容
事故から2年が経過し、症状固定となった時点で保険会社から示談提示がありました。被害者は大手IT企業のシステムエンジニアとして将来を嘱望されており、20代という若さで年収650万円を得ていましたが、両下肢完全麻痺により車椅子生活を余儀なくされ、通勤や社内移動に大きな困難が生じました。
会社は在宅勤務を認め、システム開発業務は継続できていますが、クライアント先への訪問や社内会議への参加が制限され、キャリアパスが大きく限定される状況となりました。また、両親と同居していた実家は2階建ての一般住宅で、車椅子での生活は不可能なため、バリアフリー住宅への転居または大規模な改造が必要でした。
さらに、生涯にわたる車椅子の使用、自己導尿の管理、褥瘡予防のケア、定期的な通院など、医療的ケアと介護が不可欠な状況でした。しかし、保険会社の提示では、若年での重度障害という将来にわたる深刻な影響が過小評価されており、住宅改造費用や電動車椅子などの補装具費用、将来にわたる介護費用が十分に認められていなかったため、弁護士に相談されました。
成果の概要
まず、リハビリテーション科専門医および整形外科医の協力を得て、脊髄損傷の高位(第1腰椎レベル)と完全損傷(ASIA分類A)を確認し、徒手筋力テスト(MMT)で両下肢の筋力が0レベル(完全麻痺)であること、感覚検査で完全な知覚消失、膀胱直腸機能の完全喪失を詳細に記録し、別表第一1級3号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」の認定を受けました。
その上で、生涯にわたる医療的ケアと介護の必要性を以下のように詳細に積算しました。将来治療費として、自己導尿用カテーテル等の医療消耗品(月額2.5万円)、尿路感染症予防薬(月額1.5万円)、褥瘡予防用クッション等(年額15万円)、定期的な泌尿器科・整形外科通院、尿路感染症や褥瘡治療のための入院費予備費などで約2000万円を算定しました。
また、電動車椅子(1台120万円、耐用年数6年)、車椅子対応車両への改造費用(300万円)、予備の手動車椅子、体位変換用マットレス、移乗用リフトなどの補装具・器具費用として約1500万円を算定しました。さらに、現在の実家住宅は2階建てで車椅子対応が不可能なため、玄関スロープの設置、廊下・ドアの拡張、トイレ・浴室の全面改修、段差解消、手すりの設置など、大規模なバリアフリー改造費用として約1200万円を算定しました。
介護費用については、両親が日常的な介護(食事準備、排泄介助、入浴介助、体位変換など)を行っていますが、20代の若年者であり両親も高齢化していくことから、近親者介護費用(日額8000円)を基本としつつ、両親の高齢化後は訪問介護サービスの併用が不可欠であるとして、将来介護費用を約9000万円と算定しました。
さらに、システムエンジニアという職業は在宅勤務により一定の業務継続が可能ですが、クライアント先への訪問、社内会議への参加、緊急時の対応など、重要な業務の約40%が制限されること、また車椅子生活による体力的限界から長時間労働が困難であることを、会社の上司の陳述書と実際の業務記録により詳細に立証しました。
20代という若年での重度障害により、就労可能年数が極めて長く(約45年)、また今後のキャリア形成と昇進の機会が大きく制限されることを考慮し、労働能力喪失率100%、基礎収入は将来の昇給を見込んだ年収800万円を主張しました。若年での対麻痺という人生全体への壊滅的影響と、生涯にわたる高額な医療・介護費用の必要性を総合的に立証し、訴訟を提起して最終的に約2.9倍の2億3000万円の賠償を獲得しました。
成果のポイント
- ・脊髄完全損傷による両下肢完全麻痺は、ASIA分類、徒手筋力テスト、感覚検査などにより完全麻痺(ASIA A)であることを医学的に立証することで、別表第一1級3号の認定を確実に受けることができます。
- ・車椅子生活には、電動車椅子本体だけでなく、車両改造費用、予備車椅子、移乗用リフト、体位変換マットレスなど、多数の補装具・器具が生涯にわたって必要となり、これらを詳細に積算することで高額な補装具費用を認めさせることができます。
- ・車椅子での生活が可能な住宅への改造または転居は不可欠であり、玄関スロープ、廊下・ドア拡張、トイレ・浴室改修、段差解消などの具体的な工事内容と見積もりを提示することで、住宅改造費用として1000万円以上を認めさせることが可能です。
- ・若年者(20代〜30代)の重度障害の場合、就労可能年数が40年以上と極めて長く、また将来の昇給や昇進の機会喪失を考慮すると、逸失利益が1億円を超える高額になります。将来のキャリアパスを具体的に示すことが重要です。
- ・システムエンジニア、プログラマー、デザイナーなど、在宅勤務が可能な職業であっても、車椅子生活による体力的限界、クライアント訪問の困難、キャリア形成の制限などを立証することで、相当程度の労働能力喪失を認めさせることができます。
- ・1級の重度障害では、将来介護費用が賠償総額の中で最も高額になることが多く、近親者介護と職業介護を組み合わせた現実的な介護プランを提示し、両親の高齢化などライフステージの変化を見据えた長期的な算定が不可欠です。
- ・脊髄損傷の事案では、リハビリテーション科専門医、整形外科医、泌尿器科医との緊密な連携が不可欠であり、受傷直後からの詳細な医療記録と、症状固定時の客観的検査データ、そして生涯にわたる医療・介護の必要性を多角的に立証することが、適正な高額補償を受けるための基盤となります。
