お役立ちコラム - 名古屋の交通事故弁護士

名古屋交通事故弁護士相談室 弁護士 石田大輔

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多発肋骨骨折による呼吸機能障害で、在宅酸素療法費用を含めて6800万円の賠償を獲得した事案

事故の概要と被害状況

被害者情報

性別

男性

年齢

50代

職業

大手商社営業部長

後遺障害等級

7級4号

受傷部位

左側肋骨8本骨折、右側肋骨3本骨折、血気胸、肺挫傷、呼吸機能障害

事故の態様

名古屋市東区の交差点において、乗用車で直進中の被害者が、信号無視で突入してきた加害車両に側面衝突される

賠償金額の比較

項目受任前受任後
保険会社からの提示・裁判2800万円
休業損害450万円1280万円
入通院慰謝料280万円420万円
逸失利益1800万円4200万円
後遺症障害慰謝料270万円1000万円
医療費等を含む賠償総額2800万円6800万円

交通事故の状況

乗用車で直進中の被害者が、信号無視で交差点に突入してきた加害車両に側面から激しく衝突されました。被害者に過失はなく、過失割合は0:100です。

事故により胸部を強打し、左側肋骨8本、右側肋骨3本の多発骨折を負い、骨折した肋骨が肺を損傷したことで血気胸と肺挫傷を併発しました。緊急手術により胸腔ドレナージを施行し、約2か月の入院とその後1年以上のリハビリテーションを要しました。

症状固定後も労作時の息切れ、呼吸困難が残存し、在宅酸素療法が必要な状態となりました。

相談内容

事故から1年半が経過し、症状固定となった時点で保険会社から示談提示がありました。被害者は大手商社の営業部長として活躍しており、海外出張も頻繁にこなす多忙な日々を送っていましたが、呼吸機能障害により階段の昇降や長距離の歩行が困難となり、海外出張はもちろん通常の営業活動も大幅に制限される状態となりました。

会社は配慮して内勤への配置転換を提案しましたが、実質的な降格となり収入も減少しました。しかし、保険会社の提示では呼吸機能障害の程度が過小評価されており、将来にわたる在宅酸素療法の費用や、職業への影響が十分に考慮されていなかったため、弁護士に相談されました。

成果の概要

まず、呼吸器内科専門医の協力を得て、スパイロメトリー検査(肺活量測定)、6分間歩行試験、動脈血ガス分析などの詳細な呼吸機能検査を実施し、%肺活量が55%まで低下していることを医学的に立証して7級4号「胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」の認定を受けました。

その上で、在宅酸素療法に必要な酸素濃縮器のレンタル費用(月額4万円)、電気代の増加分(月額8千円)、定期的な呼吸器科通院費用などを合わせて、将来治療費として約1200万円を算定しました。

また、海外出張や活発な営業活動を前提とする営業部長職の継続が不可能となり、内勤への配置転換により実質的に年収が約200万円減少したことを、会社の辞令や給与明細により詳細に立証しました。

さらに、高い基礎収入(年収1200万円)を有する管理職が、呼吸機能障害により業務に大きな制限を受けることの影響を重視し、通常の7級の労働能力喪失率(56%)を上回る70%の喪失率を主張しました。

営業職という職業特性と在宅酸素療法という生活への重大な影響を総合的に立証し、訴訟を提起して最終的に約2.4倍の6800万円の賠償を獲得しました。

成果のポイント

  • ・多発肋骨骨折による呼吸機能障害は外見からは分かりにくい障害ですが、詳細な呼吸機能検査により医学的に立証することで、適切な等級認定を受けることができます。
  • ・在宅酸素療法は生涯にわたって必要となる可能性が高く、酸素濃縮器のレンタル費用、電気代、消耗品費用など、詳細に積算することで相当額の将来治療費を認めさせることができます。
  • ・営業職や管理職など、活発な身体活動や出張を伴う職業の場合、呼吸機能障害による労働能力への影響は通常の等級基準を上回ることがあり、職業の特性を詳細に立証することが重要です。
  • ・配置転換による実質的な降格と収入減少は、会社の辞令、給与明細、業務内容の変化などを具体的に示すことで、労働能力喪失の証拠として認められます。
  • ・呼吸機能障害の事案では、呼吸器内科専門医との連携が不可欠であり、客観的な検査データに基づいた医学的立証が適正な補償を受けるための鍵となります。