事故の概要と被害状況
被害者情報
| 性別 | 女性 | |
| 年齢 | 30代 | |
| 職業 | 看護師 | |
| 後遺障害等級 | 12級5号、12級13号併合11級 | |
| 受傷部位 | 右側肋骨6本骨折、胸郭変形、複合性局所疼痛症候群(CRPS)類似症状 | |
| 事故の態様 | 岡崎市の県道において、自転車で走行中の被害者が、後方から追突してきた加害車両に跳ね飛ばされる | |
賠償金額の比較
| 項目 | 受任前 | 受任後 |
| 保険会社からの提示・裁判 | 850万円 | – |
| 休業損害 | 180万円 | 620万円 |
| 入通院慰謝料 | 200万円 | 350万円 |
| 逸失利益 | 350万円 | 2100万円 |
| 後遺症障害慰謝料 | 120万円 | 420万円 |
| 医療費等を含む賠償総額 | 850万円 | 4200万円 |
交通事故の状況
自転車で走行中の被害者が、後方から追突してきた加害車両に跳ね飛ばされました。過失割合は0:100です。事故により地面に強く叩きつけられ、右側胸部を強打して肋骨6本を骨折しました。
保存的治療により骨は癒合しましたが、複数の肋骨が変形して癒合したため胸郭の変形が残存し、さらに骨折部位周辺に持続的な痛みが残りました。特に深呼吸、咳、体をひねる動作で激痛が走り、夜間の寝返りでも痛みで目が覚めるという状態が症状固定後も続きました。
相談内容
事故から1年が経過し、症状固定となった時点で保険会社から示談提示がありました。被害者は総合病院の外科病棟で看護師として勤務していましたが、肋骨骨折後の慢性疼痛により患者の移乗介助や体位変換などの身体的負荷の大きい業務が困難となり、約半年間休職を余儀なくされました。
復職後も軽作業のみに限定され、夜勤も免除という状態が続いています。しかし、保険会社は胸郭変形を認めたものの、痛みについては「主観的な訴えに過ぎない」として十分な補償を認めず、また看護師という職業への影響も過小評価されていたため、弁護士に相談されました。
成果の概要
まず、整形外科医の協力を得て、CT検査により肋骨の変形癒合を詳細に評価し、変形した肋骨が外部から視認できることを写真で記録して12級5号「鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの」の認定を受けました。
さらに、持続する痛みについては、ペインクリニック専門医を受診し、骨折部位に一致した圧痛、体動時の再現性のある痛み、サーモグラフィーでの温度変化などを詳細に検査し、CRPS類似の神経障害性疼痛が存在することを医学的に立証して12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」の認定を受け、併合11級としました。
その上で、慢性疼痛に対するペインクリニックでの神経ブロック注射(月2回)、鎮痛薬の継続的使用、リハビリテーション通院などの将来治療費として約800万円を算定しました。
また、看護師という職業は患者の移乗介助、入浴介助、緊急時の心肺蘇生など、身体的負荷が極めて高い業務を含むことを、実際の業務内容や看護師長の証言により詳細に立証し、胸郭変形と慢性疼痛により通常業務の約半分しか遂行できない状態であることを明らかにしました。
これにより、併合11級の通常の労働能力喪失率(20%)を大きく上回る50%の喪失率を認めさせました。看護師という職業の特殊性と慢性疼痛の日常生活への深刻な影響を総合的に立証し、訴訟を提起して最終的に約5倍の4200万円の賠償を獲得しました。
成果のポイント
- ・肋骨骨折後の変形は、CT検査による詳細な評価と外観写真により客観的に立証することで、12級5号の認定を確実に受けることができます。
- ・骨折後の慢性疼痛は「主観的」として軽視されやすいですが、ペインクリニック専門医による詳細な検査と医学的評価により、神経障害性疼痛として12級13号や14級9号の認定を受けることが可能です。
- ・複数の後遺障害が残存する場合、それぞれについて適切な等級認定を受け、併合により等級を上げることで、賠償額を大幅に増額できます。
- ・慢性疼痛に対する将来治療費は、ペインクリニックでの神経ブロック注射、鎮痛薬の費用、リハビリテーション費用などを長期間にわたって算定することが重要です。
- ・看護師、介護職、保育士など、身体的負荷の高い職業に従事している場合、胸部の痛みや変形による労働能力への影響は通常の等級基準を大きく上回ることがあり、具体的な業務内容と制限の程度を詳細に立証することで高い労働能力喪失率を認めさせることができます。
- ・肋骨骨折後の慢性疼痛は見落とされやすい後遺障害ですが、専門医との連携により適切な等級認定を受けることで、適正な補償を獲得できます。
