フレイルチェスト(動揺胸郭)による重度呼吸機能障害で、人工呼吸器管理費用を含めて1億2000万円の賠償を獲得した事案 - 名古屋の交通事故弁護士

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フレイルチェスト(動揺胸郭)による重度呼吸機能障害で、人工呼吸器管理費用を含めて1億2000万円の賠償を獲得した事案

事故の概要と被害状況

被害者情報

性別

男性

年齢

40代

職業

一級建築士

後遺障害等級

別表第一 3級3号

受傷部位

両側多発肋骨骨折(右側8本、左側7本)、フレイルチェスト、肺挫傷、呼吸不全、気管切開

事故の態様

豊田市の国道において、トラックを運転中の被害者が、対向車線から中央分離帯を乗り越えてきた加害車両と正面衝突

賠償金額の比較

項目受任前受任後
保険会社からの提示・裁判4500万円
休業損害380万円980万円
入通院慰謝料400万円600万円
逸失利益3000万円7800万円
後遺症障害慰謝料720万円1990万円
医療費等を含む賠償総額4500万円12000万円

交通事故の状況

トラックを運転中の被害者が、対向車線から中央分離帯を乗り越えて突入してきた加害車両と正面衝突しました。被害者に過失はなく、過失割合は0:100です。事故により胸部に激しい衝撃を受け、右側8本、左側7本の多発肋骨骨折を負い、複数箇所で肋骨が連続して骨折したことでフレイルチェスト(動揺胸郭)が発生しました。

胸郭が正常に機能せず自発呼吸が困難となり、救急搬送後すぐに気管挿管・人工呼吸器管理となりました。集中治療室で3か月間の治療を受け、気管切開を施行、最終的に人工呼吸器からの離脱はできたものの、気管切開孔は閉鎖できず、在宅で非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)が必要な状態となりました。

相談内容

事故から2年が経過し、症状固定となった時点で保険会社から示談提示がありました。被害者は一級建築士として設計事務所を経営しており、現場での打ち合わせや施工監理など活発に活動していましたが、呼吸機能障害により外出が極めて困難となり、事務所の経営も実質的に継続不可能となりました。

在宅でのNPPV管理、気管カニューレの定期交換、24時間の見守りが必要な状態であり、妻が仕事を辞めて介護に専念していました。しかし、保険会社の提示では、在宅での人工呼吸器管理に必要な医療機器費用や、将来にわたる医療処置費用、随時介護の必要性が十分に認められておらず、また一級建築士という専門職への影響も過小評価されていたため、弁護士に相談されました。

成果の概要

まず、呼吸器内科専門医および胸部外科医の協力を得て、詳細な呼吸機能検査を実施し、%肺活量が35%まで低下し、動脈血酸素分圧も低値であることを医学的に立証して、別表第一3級3号「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」の認定を受けました。

その上で、在宅でのNPPV管理に必要な人工呼吸器のレンタル費用(月額12万円)、酸素濃縮器のレンタル費用(月額4万円)、気管カニューレなどの医療消耗品費用(月額3万円)、定期的な呼吸器科通院と検査費用、緊急時の入院費用の予備費などを合わせて、将来治療費として約4500万円を算定しました。

また、気管切開孔の管理、痰の吸引、NPPVの着脱など、医療的ケアを含む随時介護が必要であることから、近親者介護費用(日額8000円)を基本としつつ、妻の休息時や緊急時には訪問看護師による介護が不可欠であるとして、職業付添人費用も組み合わせた将来介護費として約3000万円を算定しました。

さらに、一級建築士という高度専門職で、年収850万円を得ていたことを確定申告書により立証し、現場での施工監理や顧客との打ち合わせが不可能となり、設計業務も在宅でのCAD作業に限定される状態では、実質的に従前の業務の90%以上が遂行できないことを詳細に立証しました。

重度の呼吸機能障害による生活全般への深刻な影響と、専門職としてのキャリアの喪失を総合的に評価し、訴訟を提起して最終的に約2.7倍の1億2000万円の賠償を獲得しました。

成果のポイント

  • ・フレイルチェスト(動揺胸郭)は肋骨多発骨折の中でも最も重篤な状態であり、呼吸機能の著しい障害により別表第一3級3号の認定を受ける可能性があります。
  • ・在宅での人工呼吸器管理(NPPV)は、機器のレンタル費用、電気代、消耗品費用など、生涯にわたって高額な費用が必要となるため、詳細に積算して将来治療費として請求することが不可欠です。
  • ・気管切開を要する状態では、医療的ケアを含む随時介護が必要であり、近親者介護だけでなく訪問看護師などの職業付添人の費用も含めた現実的な介護体制を提示することで、高額な将来介護費を認めさせることができます。
  • ・一級建築士、弁護士、医師など、高度専門職に従事していた場合、高い基礎収入と専門性の喪失により、逸失利益が極めて高額になります。
  • ・呼吸機能障害が重度の場合、労働能力喪失率は100%に近く、また就労可能年数も短縮される可能性がありますが、適切な医学的立証により、これらを適正に評価させることが重要です。
  • ・フレイルチェストなどの重篤な胸部外傷の事案では、呼吸器内科医および胸部外科医との緊密な連携が不可欠であり、救命救急段階からの詳細な医療記録と、症状固定時の客観的検査データが適正な補償を受けるための基盤となります。