事故の概要と被害状況
被害者情報
| 性別 | 女性 | |
| 年齢 | 20代 | |
| 職業 | 百貨店販売員 | |
| 後遺障害等級 | 7級12号、9級16号併合6級 | |
| 受傷部位 | 顔面多発骨折(頬骨・上顎骨・鼻骨)、外貌の著しい醜状、歯牙欠損 | |
| 事故の態様 | 岡崎市の交差点において、原動機付自転車で直進中の被害者が、右折待ちから急発進してきた加害車両と衝突 | |
賠償金額の比較
| 項目 | 受任前 | 受任後 |
| 保険会社からの提示・裁判 | 900万円 | – |
| 休業損害 | 80万円 | 280万円 |
| 入通院慰謝料 | 180万円 | 300万円 |
| 逸失利益 | 450万円 | 1720万円 |
| 後遺症障害慰謝料 | 190万円 | 1100万円 |
| 医療費等を含む賠償総額 | 900万円 | 3500万円 |
交通事故の状況
原動機付自転車で直進中の被害者が、右折待ちから急発進してきた加害車両と衝突しました。過失割合は20:80です。
事故により顔面を強打し、頬骨骨折、上顎骨骨折、鼻骨骨折の多発骨折を負い、複数回の形成手術を受けたものの、顔面に広範囲の瘢痕と陥凹変形が残りました。
また、衝撃により前歯4本を失い、歯科治療とブリッジによる補綴を要しました。
相談内容
症状固定後、保険会社から示談提示がありましたが、被害者は20代の若い女性で、百貨店の化粧品売り場で接客販売を担当していました。
顔面の醜状障害により、接客業務の継続が極めて困難となり、人前に出ることへの強い抵抗感から休職が続いていました。
しかし、保険会社は醜状障害を機械的に評価するのみで、若い女性にとっての精神的苦痛や、接客業という職業への影響が適切に考慮されていませんでした。また、将来の整形手術費用や歯科治療費についても十分な補償がなされていなかったため、弁護士に相談されました。
成果の概要
まず、形成外科医の協力を得て、醜状障害の程度を詳細に評価し、顔面の瘢痕が手のひら大以上の範囲に及んでいることを医学的に立証して7級12号の認定を受けました。さらに、歯牙欠損について9級16号の認定を受け、併合6級としました。その上で、若い女性にとっての顔面醜状障害の精神的苦痛は極めて大きいことを、精神科医の診断書や心理カウンセラーの意見書により立証し、慰謝料の大幅な増額を主張しました。
また、接客業という職業の特性上、顔面の外観は業務に直結する重要な要素であることを、職場の上司や同僚の証言、実際の勤務状況の変化などにより詳細に立証し、通常の6級の労働能力喪失率(67%)を上回る喪失率を認めさせました。さらに、将来の整形手術費用として約500万円、歯科ブリッジの将来的な交換費用として約200万円を将来治療費として請求しました。容貌に関わる障害が若い女性に与える影響の重大性を重視し、訴訟を提起して最終的に約4倍の3500万円の賠償を獲得しました。
成果のポイント
- ・顔面の醜状障害は、特に若い女性にとって精神的苦痛が極めて大きく、等級に対応する定型的な慰謝料額を大きく上回る増額が認められる可能性があります。
- ・接客業や営業職など、外見が重要な職業に従事している場合、醜状障害による労働能力への影響を詳細に立証することで、高い労働能力喪失率を認めさせることができます。
- ・形成外科手術による瘢痕の改善可能性がある場合、将来の整形手術費用を請求することができ、複数回の手術が予定される場合は相当額が認められます。
- ・歯牙欠損によるブリッジやインプラントは定期的な交換が必要であり、平均余命までの将来治療費を請求することが重要です。
- ・醜状障害の事案では、外観の問題だけでなく、それが被害者の人生に与える多面的な影響を、医学的・心理学的・社会的な観点から総合的に立証することが重要です。
