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事故の概要と被害状況
被害者情報
| 性別 | 男性 | |
| 年齢 | 40代 | |
| 職業 | 建設作業員(鉄筋工・足場組立) | |
| 後遺障害等級 | 10級 11号 | |
| 受傷部位 | 右脛骨腓骨開放骨折、右足関節機能障害 | |
| 事故形態 | 愛知県岡崎市の国道において、直進中のバイク(被害者)が、対向車線から右折してきた加害車両と衝突しました。 | |
賠償金額の比較
| 補償項目 | 受任前 | 受任後 |
| 休業損害 | 150万円 | 320万円 |
| 入通院慰謝料 | 100万円 | 145万円 |
| 逸失利益 | 600万円 | 1800万円 |
| 後遺症障害慰謝料 | 50万円 | 550万円 |
| 医療費等を含む 賠償総額 | 900万円 | 2900万円 |
相談内容
症状固定後、保険会社から示談提示がありました。建設作業員として鉄筋工事や足場組立に従事していた被害者は、右足関節の機能障害により現場作業がほぼ不可能となり、資材管理などの軽作業に配置転換されました。その結果、年収は450万円から250万円へと約44%減少しました。
しかし、保険会社は以下の対応でした:
後遺障害等級:12級7号程度が妥当(実際は10級11号該当)
労働能力喪失率:わずか14%(10級標準27%の半分)
提示理由:「事務職も建設作業員も同じ基準で評価」「復職しているので影響は小さい」
建設作業員にとって足の障害が致命的であるにもかかわらず、職業特性が全く考慮されていないことに納得がいかず、弁護士に相談されました。
成果の概要
1. 後遺障害等級の適正化(12級→10級への向上)
保険会社は12級7号程度と主張していましたが、弁護士が専門医と連携して以下を実施:
足関節専門医への転院
ゴニオメーターでの詳細な可動域測定(3回平均)
右足関節:健側の約50%に制限
底屈15度(健側40度)、背屈5度(健側20度)
筋力測定:右下腿筋力が健側の約60%
歩行分析、MRI検査の実施
異議申立により10級11号の認定を取得しました。
2. 職業特性を重視した逸失利益の立証
建設作業員の足関節障害が労働能力に与える決定的影響を多角的に立証:
①職業内容の詳細分析
不整地での立位作業→足関節の安定性が必須
足場上での高所作業→バランス能力が生命に関わる
しゃがみ込み作業→可動域が必須
重量物運搬→足関節での踏ん張りが必須
②医師意見書の取得
整形外科専門医の見解:
「建設作業員にとって足関節機能は業務遂行の根幹。一般事務職なら座位中心で影響限定的だが、建設現場では足関節障害が労働能力に決定的影響を与える。医学的には40〜50%程度の労働能力喪失が妥当」
③労働安全専門家の意見
労働安全コンサルタントの見解:
「足関節機能障害のある労働者を高所作業・足場作業に従事させることは、労働安全衛生法上問題。被害者の障害程度では、建設作業員としての就労は安全管理上困難」
④実際の減収実績の立証
給与明細による証明:月収37.5万円→20.8万円(44%減)
業務内容の変化:現場作業→資材管理・簡易事務(実質的な職種変更)
⑤同種裁判例の収集
建設作業員の下肢障害事案を20件以上分析:
東京地判:30代建設作業員、膝10級→喪失率35%
名古屋地判:40代鳶職、足関節10級→喪失率40%
大阪地判:50代型枠大工、足関節10級→喪失率38%
3. 訴訟による解決
保険会社との示談交渉が難航したため、訴訟を提起しました。
訴訟での主張
後遺障害:10級11号
労働能力喪失率:40%(標準27%を大幅に上回る)
根拠:建設作業員の足関節障害は一般事務職と比較して影響が著しく大きい
実際の減収率:44%
裁判所の判断
約1年の審理を経て判決:
労働能力喪失率:35%(標準27%を大幅に上回る)
判決理由:「建設作業員にとって足関節機能は極めて重要であり、一般的な事務職等と比較して労働能力への影響は著しく大きい」
最終和解
判決を踏まえ、以下で和解成立:
逸失利益:450万円×35%×14.714(ライプニッツ係数)≒約2,317万円
過失相殺後:約1,970万円→最終1,800万円で合意
その他損害含む総額:2,900万円
成果のポイント
職業特性による個別評価の重要性
後遺障害による労働能力喪失は職業により大きく異なります。肉体労働者の手足の障害は、事務職と比較して遥かに深刻な影響を及ぼします。
画一的評価からの脱却
保険会社の「等級に応じた標準的喪失率」を機械的に適用する姿勢は不当です。個別の職業特性を無視した評価を覆すことが可能です。
多角的な立証活動の必要性
医師意見書、労働安全専門家の意見、実際の減収実績、同種裁判例など、多方面からの立証により標準を大幅に上回る評価を獲得できます。
実際の減収実績が強力な武器
本件では44%の減収実績が、40%の喪失率主張の根拠となり、最終的に35%の認定につながりました。
訴訟による適正評価の実現
示談交渉では保険会社が譲歩しない場合、訴訟により裁判所の公正な判断を得ることで、当初の3倍以上の賠償を獲得できます。
